化学物質過敏症(環境病)をめぐる動き(2005年)
最近の動き 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年
 
道内公立校の6割、室内化学物質濃度調査を実施せず
   2004年度に、北海道内の市町村立学校の6割弱が、文部科学省が求める年1度の室内化学物質濃度物質の測定検査を行わなかった。道教祖の調査によると、市町村立の小中高校・養護学校など2173校のうち、ホルムアルデヒドの検査を行ったのは43.6%の948校、トルエンなどの揮発性有機化合物は43%の935校。検査の結果、いずれかの化学物質が基準値以上だったのは306校。換気などの対策で再検査した93校すべてで基準値を下回ったが、213校は再検査を行っていない。道立高校など241校はほぼすべて検査し、化学物質が基準値を上回った66校は再検査の結果、全校が基準値を下回った。未実施の大きな理由とされていた検査費用の負担を、国が交付税でまかなうことが決まったことから、道教委は「05年度は、市町村立学校でも全体の8割ぐらいで実施する見通し」(スポーツ健康教育課)とみている。(12/22北海道新聞)

 
公調委にCSの原因裁定を申し立て
   ホームセンターで購入した集成材で作った机で、化学物質過敏症(CS)になったとして、奈良県大和郡山市の20代の男性が、国の公害等調整委員会に原因裁定を申し立てた。男性は04年4月に集成材を購入し、自宅で組み立てて机として使い始めたが、5月に突然発症。12月に机を撤去すると、約1週間で病状が好転したという。男性は今年2月にCSと診断された。検査結果からは、換気状態によっては一部の化学物質が室内濃度指針値を超える恐れがあるという。(12/13毎日新聞)
 
大阪地裁が発症者の入廷に配慮
   大阪市北区のマンションが原因でシックハウス症候群を発症したとして、住民ら46人が販売元の大京などにリフォーム費用など約3億円の損害賠償を求めた訴訟で、10月に原告の本人尋問が行われた。大阪地裁と弁護団の協議で、尋問1週間前から、(1)入廷経路の廊下でワックスを使わない(2)付近の垣根や芝生に除草剤をまかない(3)トイレでは化学物質を含まない洗剤を使い、芳香剤も置かない−−などの対応を取った。尋問当日には、傍聴者にも「喫煙後」「ドライクリーニング直後や防虫剤のにおいがついた衣服の着用」「香水やにおいの強い化粧品、整髪料使用」の場合の入廷を遠慮するよう、張り紙で求めた。尋問では原告5人が被害を訴え、ほかに十数人の原告が傍聴したが、大きなトラブルはなかった。(12/9読売新聞)
 
シックハウス裁判で初の勝訴
   購入した新築分譲マンションがシックハウスだったとして、買い主が売り主の「ベル・アンド・ウイング」(東京都港区)に約5631万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12月5日、東京地裁であり、杉浦正樹裁判官は売り主の瑕疵(かし)担保責任を認め、購入代金4350万円を含む約4791万円の支払いを命じた。シックハウスの訴訟では、初めての「勝訴」とみられる。
 
使用禁止の有機塩素系農薬の処理で環境汚染
   人体に影響があるとして5種類の有機塩素系農薬(アルドリン、ディルドリン、エンドリン、BHC、DDT)が70年代に使用禁止にされた際、国の指導に従い地中に埋めるなどした31道府県のうち、12道府県で土壌や地下水の汚染があったことが分かった。そのうち5府県(山形、大阪、山口、福岡、沖縄)は「埋設場所が分かると犯罪に利用される恐れがある」「汚染は限定的」などの理由で、環境基準を超す汚染の事実を公表していなかった。国は04年度から埋設農薬の最終処理に乗り出したが、埋設場所などの情報公開には消極的。専門家は「住民が汚染にさらされる危険もあり、情報の公開は不可欠」と指摘する。(11/24朝日新聞)
 
農薬による健康被害で、農家に賠償命令
   自宅に隣接する畑で使われた土壌消毒剤によるクロルピクリンガスの影響で2003年3月、目やのどの痛みと出血、意識障害などの健康被害があったとして、千葉市緑区の男性(35)ら家族6人が約1800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、千葉地裁の小磯武男裁判長は21日、農家に約530万円の支払いを命じた。一家は、農家が農薬飛散防止義務を怠り、千葉みらい農業協同組合も必要な指導をしなかったとして、昨年9月に提訴していた。農協への請求は「農薬の使用方法は、容器に記載されていた」などとして棄却した。(11/21共同通信)
 
酸化チタン廃棄物で作るフェロシルトの問題で、メーカーを強制捜査
   石原産業(大阪市)が製造した土壌埋め戻し材「フェロシルト」をめぐる問題で、三重県警生活環境課などは8日午前、廃棄物処理法違反(委託基準違反)の疑いで同社本社と四日市工場(三重県四日市市)の家宅捜索に着手するとともに、鈴鹿署に特捜本部を設置した。調べでは、石原産業はフェロシルトを産廃と認識しつつ商品と偽装し、産廃処分業の許可を持たない四日市市などの業者に処分を委託した疑い。最終的には別の業者に転売され、2001年12月から今年4月にかけ、約13万トンが三重県亀山市辺法寺町に埋められた。 石原産業によると、同社はこの分を含め、01年8月から今年4月にかけ、計約72万トンのフェロシルトを販売。転売されるなどし、東海三県や京都府に埋められた。
 フェロシルト問題は、愛知県瀬戸市で昨年暮れ、雨が降るたびに川が真っ赤になり、表面化。その後、各地の埋め立て現場で環境基準を超える六価クロムやフッ素が検出されたが、三重県が「リサイクル製品」に認定しており、撤去などの対応は進まなかった。しかし、先月12日、石原産業が認定外の廃液を混入していたことを認め、一気に社会問題化した。同県は今月5日、フェロシルトを産業廃棄物と認定し、県警に刑事告発していた。(11/8中日新聞)
 石原産業は、酸化チタン製造では国内市場の3割を握り、国内7社のうち最大手。東証・大証1部上場。主な収益は農薬部門。04年度売上高は754億円、従業員数約1千人。(11/8朝日新聞)
 
不法産廃処理被害の住民3人が化学物質過敏症と診断
   沖縄県西原町棚原地域の住民らが健康被害を訴えている問題で、3人が化学物質過敏症を発症していることが医療機関の検診で分かった。町が27日、町役場で開いた会見で明らかにした。住民らが「以前あった施設からの焼却煙が原因」として、皮膚の発疹やかゆみ、頭痛やだるさなどの異常を訴えている。町は住民らの要望を受け9月30日、棚原や徳佐田の住民(男女それぞれ5人)を公費で化学物質過敏症の専門医療機関(東京)へ派遣し、検診を実施した。その結果、10人のうち8人にいずれかの障害が検出され、うち2人が化学物質過敏症に進行中との診断も下された。会見で新垣正祐町長は「住民に広がっている不安を解消するため、今後、原因解明とともに、健康診断、相談を行いたい」と話した。 (10/27琉球新報
 
住宅も石綿除去義務化へ
   国土交通省は既存のマンションやビルで使われている吹き付けアスベストについて、飛散防止や除去を所有者に義務づける方針を明らかにした。来年の通常国会で建築基準法改正をめざす。事業所については労働安全衛生法で飛散防止や除去が義務づけられているが、既存住宅でのアスベスト使用に規制はなかった。12日の国交相の諮問機関、社会資本整備審議会の対策部会で、同省が法改正の素案を示した。規制対象は、室内などに露出している吹き付けアスベストとアスベスト含有の吹き付けロックウール。封じ込め対策がとられていない場合は、建物の使用を禁止する。アスベストの吹き付けは75年、「特定化学物質等障害予防規則」で原則禁止されている。また、増改築の際には、除去などの対策が持ち主の義務となる。(10/13朝日新聞
 
減農薬農家を助成へ
   農林水産省が07年度から導入する「環境支払制度」の概要が明らかになった。環境維持などの作業に携わる農村住民の所得を支えるもので、農業用水の維持管理に共同で取り組む集落が対象の助成と、化学肥料や農薬に頼らない農家に対する支援の2本柱。環境支払制度は通常の補助金とは異なり、生産活動と切り離して農家などに直接補償する。虫食い農産物が安値でしか売れないことを恐れる農家に助成金を支払うことで、減農薬農業を広げる狙いだ。(10/13朝日新聞)
 
パソコン業界、化学物質の自主ガイドライン策定
   社団法人電子情報技術産業協会は9月29日、「パソコンに関するVOCガイドライン」をまとめた。学校がコンピュータなどの備品を搬入した時には、教室内の化学物質濃度を測定し、文科省が定める「学校環境衛生の基準」の基準値を超えていないことを確認するよう2002年に義務付けられた。このため、パソコン業者が商談などの際に学校側から、VOC放散データ提示や、室内濃度が基準値を超えないことの確認を求められるようになった。このため、各社独自に決めていた測定方法や基準を業界で統一することにした。ガイドラインの対象は、文科省の基準値がある6物質とアセトアルデヒドの計7物質。平均的な教室の条件(容積180m3、換気回数2.2回/h、40台設置)の場合、計算上、最大濃度が基準値の10%になるよう、パソコンなど1台あたりの化学物質放散速度の指針値を定めた。(電子情報技術産業協会のホームページ
 
首相公邸はシックハウス
   細田博之官房長官は、小泉首相が住んでいる首相公邸がシックハウスだと指摘した。10月5日の参議院予算委員会で、櫻井充議員(民主党)が、アスベストやシックハウス症候群などへの対応を質問したのに対し、細田官房長官は「私もシックハウス気味で、首相公邸ができたときに、これはどうも目がチカチカしておかしいぞ、と思った。(職員が)早速窓を開けてくれて『なおりました』と言ってたが、私はなおったとは思わない。(今も)入ると目がチカチカする」と述べた。首相は今年4月に首相公邸に引っ越した。(10/6東京新聞)(参議院予算委員会の録画
 
日本弁護士連合会が、化学物質過敏症に関する提言をまとめる
   日本弁護士連合会(日弁連)は、化学物質過敏症に関する総合的な提言を取りまとめ、9月6日に厚生労働省や関係各官庁、参議院議長へ提出、9月27日に衆議院議長及び各政党へ提出した。提言では、この問題について被害実態の十分な調査を求めるとともに、事前の措置としての規制の強化、事後の措置としての救済体制の整備((1)一般市民や関係者への知識等の普及、(2)医療体制の整備、(3)相談体制の整備、(4)子どもの教育への配慮・労働者の労災による救済)を提言し、最後に総合的な化学物質対策の必要性を訴えている。(日弁連のホームページ
 
化学物質による健康被害防止へ、国連が行動計画案
   有害な化学物質や農薬による生態系破壊や健康被害を国際協力で防ごうと、国連が初めて行動計画案をまとめた。化学物質の影響を受けやすい子供の健康被害を減らすための対策を2010年までにまとめることや、アスベスト(石綿)の07年までの使用全廃を目指すことなど、288項目に及ぶ包括的な計画。先進国では使われなくなったDDTなど有害な農薬が使われている発展途上国への資金や技術援助の充実を強く進める。来年2月に国連環境計画が主催してドバイで開く閣僚級会合で、 計画の着実な実行をうたった閣僚宣言とともに採択し、各国に実行を求める方針。原則的に強制力はないが、日本も子供に重点を置いた対策の強化や途上国支援などの対応を迫られることになる。(9/17共同通信)
 
農薬定期散布をやめる病院も
   殺虫剤や殺鼠剤を定期的に広く散布するのをやめる病院が増えている。侵入路をふさいだり、ごみ管理を徹底したりした上で、使う薬剤を必要最低限に抑えるIPM(総合的防除)と呼ばれる方法だ。従来の広範囲の散布と比べて、人体への影響が少ないというメリットがある。(9/11朝日新聞)
 
学校の45%が全面禁煙
   学校敷地内は全面禁煙として いる学校は2万4082校で、全体の45.4%に上っていることが、文部科学省の調 べで分かった。学校の受動喫煙対策についての調査は初めて。対策を取っていないと回答したのは、2485校(4.7%)だった。盲・ろう・養護学校や中等教育学校も含めた学校全体(5万3039校)のうち、対策を講じているのは5万554校で95.3%。このうち、敷地内で全面禁煙なのは4 5.4%、校舎など建物内に限り禁煙が1万2511校(23.6%)、建物内に喫煙 場所を設けて分煙措置を講じているのが1万3961校(26.3%)だった。(8/26毎日新聞)
 
アレルギー、白血球の一種が原因
   白血球の一種が、一部のアトピー性皮膚炎などを引き起こす主役になっていることが 、東京医科歯科大などの研究で分かった。この白血球が、かゆみや炎症を起こす血液中の細胞を皮膚に引き寄せる物質を分泌していると考えられ、白血球の働きを抑えるよう な薬ができれば新しい治療法につながると期待される。24日発行の米免疫学専門誌に掲載される。研究チームはIgEの高いマウスを遺伝子操作で作製。アレルギーを起こす成分を耳に注射すると、1時間以内、6〜10時間後、 2日後の計3回、皮膚が腫れた。1、2回目はすぐにひいたが、3回目の腫れは1週間以上続く慢性症状でアトピー性皮膚炎に近く、皮膚にアレルギー性炎症を起こす細胞が多数集まっていた。これらの細 胞と腫れの関係を詳しく調べた結果、白血球の一種で好塩基球という細胞のみが、長く 続く腫れに関与していた。(8/24毎日新聞)
 
虫よけ剤、子どもへの使用を制限 厚労省が業界指導へ
   蚊などに刺されないよう肌にスプレーしたり塗ったりする虫よけ剤について、厚生労 働省は「6カ月以下の赤ちゃんには使用しないこと」など、子どもへの使用制限や成分表示の徹底を業界に指導することを決めた。副作用などの報告はないが、化学物質に対する不安の声を受けた予防的措置。これまでは使用の上限量などがわかりづらかったが、来春には統一した注意表示で製品に記されそうだ。
 虫よけ剤の主成分はディート(正式名・ジエチルトルアミド)で、一般に毒性は低いとされる。ただ国民生活センターには子どもの体への影響を心配する声が多く寄せられ、安全性の検討を同省に要望していた。具体的には、6カ月〜2歳まではディートの濃度10%以下のものを1日1回使い、 顔や手には付けず長期使用も控える▽2〜12歳の使用は1日3回まで――などの内容を、商品の添付文書や本体に記載。医薬品だけでなく医薬部外品にも有効成分の名前と
分量(濃度)を示すよう求める。同省は、ラットの皮膚にディートを塗った米国の実験で神経細胞に影響があったとする報告があることから、国内でも同様の動物実験を行い、人体への影響を調べる。(8/17朝日新聞)
 
酸化チタン廃棄物で作るフェロシルトに広がる不安
 

 チタン鉱石から酸化チタンを製造する過程で出る廃棄物「硫酸廃液」を再利用した土壌埋め戻し材「フェロシルト」が、各地で野積みされたり埋められて、環境への影響が心配されている。
 酸化チタン廃棄物には放射性物質が含まれ、90年、岡山県の産廃処分場で高度の放射線が検出され問題になった。91年に科学技術庁など4省庁が協議、自然界と同程度の放射線量率(1時間あたり0.14マイクログレイ)以下という廃棄物としての目安を示した。フェロシルトはこの条件に基づいて製品化され、メーカーの石原産業(大阪市)は「安全性に全く問題はない」とする。
  03年には三重県がフェロシルトをリサイクル製品として認定した。土砂の埋め戻しで、土を使うよりも安価だったため普及した。
 今年6月以降、岐阜や愛知で野積みされたフェロシルトから発がん性物質の六価クロムが検出され、新たな問題が表面化した。岐阜県の調査では、一部で最大、土壌環境基準の24倍を検出した。石原産業は「製品には六価クロムは含まれておらず、なぜ検出されたのか分からない」という。同社は今年4月、フェロシルトの製造を中止。一部地域で自主回収する方針を打ち出した。(7/25中日新聞)

 
新築住宅の1%に有症者
   新築住宅に住む世帯の1%程度はシックハウス症候群の症状を訴えていることが、厚生労働省研究班(研究班主任・岸玲子北海道大学大学院教授)の調査で分かった。2003年11月〜04年6月に札幌、福島、名古屋、大阪、岡山、北九州の6市で、新築や改築から6年以内の一戸建てに住んでいる約2300世帯から回答を得た。目鼻のかゆみや痛み、頭痛などの症状がいつもあり、家を離れると改善する場合を「シックハウス症状」と定義。家族に1人でも症状のある世帯は2.0%で、症状が時々ある場合も含めた「広義の症状」では4.3%が該当した。研究班は回答しなかった世帯に有症者がいない可能性を考慮、全国の発率を「0.8〜1.8%」と推計した。(7/25共同通信
 
学会が有機農業推進法試案
   日本有機農業学会(会長・中島紀一茨城大教授、180人)は25日、有機農業の振興を図る有機農業推進法(仮称)の要綱試案を発表した。超党派の国会議員でつくる有機農業推進議員連盟に試案を示し、議員立法につなげるのが目的。消費者、生産者らの意見を聞き、8月上旬にも最終案を発表する。(7/25共同通信)
 
厚労省、フェンチオン使用しないよう要請
   厚生労働省結核感染症課は22日、有機リン系殺虫剤フェンチオンについて、西ナイル熱のウイルスを媒介する蚊の防除対策としては使用を控えるよう、全国都道府県に文書で要請した。フェンチオンは鳥に強い毒性を示すため、鳥類研究者らは、殺虫剤のリストから外すように厚労省に求めていた。 (7/23毎日新聞)
 
ディーゼル車と同じ有害物質が、有機リン農薬でも発生
   ディーゼル車から出る粒子(DEP)に含まれ、血圧低下や心拍の異常などを引き起こす化学物質の正体が、ニトロフェノール類と呼ばれる物質であることを、国立環境研究所、北海道医療大、東京農工大などの共同研究グループが突き止めた。このうちの一つは、3−メチル−4−ニトロフェノール(PNMC)で、このPNMCは、日本で大量に使われている有機リン農薬のフェニトロチオンが人間の体内で代謝されてできるほか、フェニトロオンを空中散布した後などに大気中で分解されてでき、大気や雨水の中からもしばしば検出される物質だ。ニトロフェノール類が女性ホルモンに似た働きを持つことも確認され、今後、ディーゼル車や農薬使用に対する規制強化を求める声が高まりそうだ。DEPが、生物の循環機能や生殖機能に悪影響を及ぼすことなどは分かっていたが、粒子中には非常に多種類の化学物質があるため、その正体は長い間の謎だった。(7/21共同通信)
 
アスベストでクボタ社員ら10年で51人死亡、工場周辺住民も2人
   アスベスト(石綿)を材料に水道管や建材を製造してきた大手機械メーカー「クボタ」(本社・大阪市浪速区)の社員(退職者含む)や出入り業者の間で、がんの一種「中皮腫」や肺がんなど石綿関連病の発症が急増し、過去10年間で51人が死亡していたことが分かった。石綿水道管を長年製造した兵庫県尼崎市の旧神崎工場での勤務経験を持つ人が大半という。また、同工場の周辺住民5人も中皮腫を発症し、うち2人が死亡していたことが、民間団体「関西労働者安全センター」(大阪市中央区)の調べで判明した。石綿関連がんの潜伏期間は約20〜50年とされ、他の石綿関連企業でも発症者数が急激に増加するとみられる。(6/29毎日新聞)
 
家電に有害6物質表示義務づけへ
   環境省は8日、鉛や水銀など6種類の有害物質を一定量以上含む大型家電製品やパソコンなどを対象に、使用などの表示をメーカーに義務付ける制度を導入することを決めた。国や自治体は有害物質を含まない製品を率先して購入、民間にも同様の措置を促すとしており、代替品がない場合などを除き、事実上の使用禁止につながる。欧州連合(EU)は2006年7月以降、域内で販売される家電製品などへの6物質の使用禁止を特定有害物質使用禁止指令で求めており、日本もEU並みの規制を目指す。表示は資源有効利用促進法に政省令で盛り込み、06年度以降の導入を目指す。6物質は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB(ポリ臭化ビフェニール)、PBDE(ポリ臭化ジフェニールエーテル)。(6/8共同通信)
 
高知県内のほぼ全てのタクシーで禁煙
   高知県内のほぼ全てのタクシーが禁煙になることが決まった。運転手は客を乗せて走るときだけでなく、空車時も禁煙。灰皿の装備は続けるが、乗客にも禁煙への協力を呼び掛けるという。タクシー業者約360社(約1800台)が加盟する県ハイヤー・タクシー協議会が、7月1日までに運転手の車内禁煙を始めると決議した。同協議会によると、県全体で取り組むのは全国初という。(6/3共同通信)
 
引っ越し経験者に多い大人のぜん息
   大人のぜん息について、引っ越しをした人は、していない人に比べて9.7倍、発症しやすいという調査結果を、岡山大学医学部の谷本安講師のグループがまとめた。成人してからぜん息にかかった人と、ぜん息でない人計1000人を対象にアンケートを行った結果、ぜん息の人のおよそ35%が発症する1、2年前に引っ越しをしていた。さらに、「家族がタバコを吸う」と5倍、「痰が多く出るかぜを引く」と4.6倍、ぜん息にかかりやすくなった。(6/3NHK)
 
「排気無理なら全面禁煙」通達
   職場の受動喫煙防止対策として、厚生労働省は、屋外排気などで確実に受動喫煙を防止できない場合は全面禁煙を事業所に勧奨するよう都道府県労働局あてに通達を出した。(6/2時事)
 
本人や夫の喫煙で妊娠率半減
   体外受精で妊娠する確率は、妻本人や夫がたばこを吸っていると、夫婦そろって非喫煙者の場合の約半分に減ってしまうという調査結果を、カナダ・マクマスター大の研究者が、26日発行の欧州の医学誌「ヒューマン・リプロダクション」に発表した。間接喫煙の害が胎児に及ぶという報告はあったが、妊娠のしやすさにまで関係することを示したのは初めてという。体外受精による妊娠ではなく、自然の妊娠でも同じ結果なのかどうかを含めさらに確認が必要だ。(5/27共同通信)
 
新聞に東京労災病院クリーンルームの記事掲載
  5/16付毎日新聞
 
新聞に携帯電話基地の記事掲載
  5/12付毎日新聞
 
国交省、室内空気質の実態調査結果を公表
   国交省は5月10日「平成16年度室内空気中の化学物質濃度の実態調査の結果 等について(速報)」を公表した。ホルムアルデヒド濃度が厚労省指針値を超過していたのは、改正建築基準法施行前に着工した住宅で1.6%、施行後に着工した住宅で1.3%。一方、アセトアルデヒド濃度が超過したのは、同様に9.7%、10.2%だった。ホルムアルデヒド超過は03年度の5.6%を下回った一方、アセトアルデヒド超過は、9.5%から上昇した。また、改正建築基準法に基づいていても、ホルムアルデヒドの指針値を超えるケースがゼロにはならなかった。国交省は当センターに対し「改正建築基準法施行後の着工分のデータは、一戸建てが多く、工期がより長いマンション等は、まだあまり含まれていない。今年度、もう一度調査を行い、その結果 等を踏まえて、それ以降の対策について検討していく」と説明した。調査結果 の全文は、5月中に公表される予定とのこと。(国交省のホームページ
 
幹線道路の排ガス被害、児童1万6千人の健康調査へ
   車の排ガスによる健康影響を明らかにするため、環境省は今年度、幹線道路沿いなどに住む小学生約1万6000人を対象にした5年間の疫学調査に着手する。排ガスによる大気汚染と健康被害の因果 関係を調べるこれほど大規模な科学的調査は初めて。調査が行われるのは、環状7号線(東京都)や国道302号(愛知県)、国道43号(大阪府)など、昼間の交通 量が4万台以上の幹線道路が通る6地域。それぞれ幹線道路沿いの小学校と、道路から離れた小学校を選び、1〜3年生を対象に、ぜんそく症状の有無などを5年間追跡調査。アレルギー症状を調べる血液検査にも協力してもらう。(5/2読売新聞)
 
横浜の高校のシックスクール、生徒約100人にも影響
   神奈川県立保土ケ谷高校(横浜市)で2日、教職員と生徒約100人が、シックハウス症候群と見られる症状を訴えていることが分かった。登校直後から体調不良を訴える生徒が相次いだため、授業は行わず、全生徒を帰宅させた。同校によると、昨年9月に雨漏り補修工事をした際に使われた有機溶剤が原因とみられる。刺激臭のある部分は防火シャッターを閉めるなどして対応していたが、ここ数日の気温の上昇に伴い、被害が広がったとみられている。 (5/3朝日新聞
 
迎賓館の農薬散布で通学に支障
   国賓のもてなしに使われる東京・赤坂の「迎賓館」の敷地の松や芝生などにまく農薬が原因で、約150m離れた区立中学校に通 う化学物質過敏症の男子生徒の通学に支障が出ている。散布を事前に知らせてもらうが、多いときはひと月の半分が登校できない。迎賓館の庶務課長は「迎賓館の散布で発症するのかどうかや、散布による休学日数などを把握した上で、専門家の意見なども聞きながら、できる努力はしたい」としている。(4/15朝日新聞
 
1,860万円でシックハウス訴訟和解
   1997年に行った自宅の防水・防腐工事で発症したとして、神戸市の夫婦が建築会社など3社に損害賠償を求めた訴訟は6日、神戸地裁(紙浦健二裁判長)で、3社が和解金約1,860万円を支払うことで和解が成立した。和解金には建物の評価額の6割にあたる約1,500万円に加え、慰謝料100万円が盛り込まれた。(4/7神戸新聞報道
 
職場でシックハウス症候群発症の元職員に労災認定
 

 新築の職場で発生したホルムアルデヒドが原因でシックハウス症候群になったとして、環境省所管の「地球環境戦略研究機関」(神奈川県葉山町)の元契約職員の女性(32)=長野県在住=が休業補償を求めた労災申請について、横須賀労働基準監督署は25日までに、業務との因果 関係を認め、労災認定した。厚生労働省によると、シックハウス症候群の労災認定は、これまで北海道、大阪、愛媛など全国で6件あるが、労災申請を支援した神奈川労災職業病センターは「新築の建物での認定は初めて」としている。認定の理由は、女性の職場にホルムアルデヒドが存在したことや他の原因がないこと、複数の職員が症状を訴えていたことなどがあったとみられる。地球環境戦略研究機関は「原因が分からず対応に苦慮していたが、元職員が救済されてよかった。全国にも症状に悩む事業者や患者がおり、労基署の判断を評価したい」とコメントしている。(3/25共同通 信)

 
違法産廃処分場の周辺住民が化学物質過敏症と診断
   沖縄県西原町棚原で廃棄物処分業者が廃プラスチックの焼却許可を得ていない焼却炉で違法に医療廃棄物を処理し、周辺住民が大気汚染による健康被害を訴えている問題で、10代から70代までの男女の住民10人が11日、東京の北里研究所病院臨床環境医学センターで検診を受けた。その結果 、全員が中毒後遺症と診断され、うち4人が化学物質過敏症を発症か発症に近い状態にあることが分かった。住民らで構成する「棚原地域医療ごみ違法焼却問題を考える会」が21日、記者会見し明らかにした。住民らは「違法焼却による健康被害の証拠」として、実態の解明や専門医による地域での集団検診などを町などに早急に求めることにしている。新垣正祐・西原町長は「検査の詳しい結果 は分からないが、町としても検診実施を目指し努力している」とし「化学物質過敏症の原因が焼却炉なのか、今後、追究しなければならない」と述べるにとどまった。 (3/22付琉球新報)
 
03年度の化学物質排出量
 

 環境省と経済産業省は18日、03年度に全国の工場などから大気や河川に排出された指定有害化学物質(354種類)の総量 は対前年度比0.3%増の約29万1000tだったと発表した。化学物質排出管理促進法(PRTR法)に基づき、事業所が届け出たデータをまとめた。排出以外に、廃棄物や下水として外部へ移動した有害化学物質の量 は約24万tだった。届け出対象以外の事業所や家庭などから排出された量 は推計約34万2000tだった。今回から有害化学物質の届け出要件は「5t以上」から「1t以上」に引き下げられた。一方、排出総量 はほぼ横ばいだったため、環境省環境安全課は「事業者による化学物質の管理の改善が進んでいる」と話す。しかし、浦野紘平・横浜国立大大学院教授(環境安全学)は「届け出が増えたのは自動車関係など特定業種だけで、届け出要件の引き下げが周知徹底されていないのではないか。国は排出量 のデータから改善が進んだというが、六価クロムなど毒性の強い物質
はあまり減っておらず、毒性と量の二つの面から評価すべきだ」と指摘している。(3/19付毎日新聞)

 
岐阜市が公共施設での香水などの自粛呼びかけへ
 

 岐阜市は、化学物質過敏症の人に配慮し、公共施設での香料などの使用自粛を市民らに呼びかけることを明らかにした。14日の市議会定例会の一般 質問で、安藤征治教育長は、化粧品や香水、整髪料の影響で授業に参加できない東京都の児童の例を報告、「授業参観などで保護者に啓発していきたい」と述べた。担当部長も「香料自粛のポスターの掲示を関係施設に要請していきたい」とした。厚生労働省は「公的機関による香料の使用自粛呼びかけは聞いたことがない」と話している。(3/15中日新聞)

 
タンチョウに農薬汚染
   釧路湿原など、北海道東部に生息する国の特別 天然記念物タンチョウに、農薬汚染が広がっている実態が明らかになった。環境省の「タンチョウ保護増殖分科会」(座長・藤巻裕蔵帯広畜産大名誉教授)が2001〜04年、畑や牧草地などで死んだタンチョウ7羽を回収、解剖した結果 、4羽から有機リン系殺虫剤フェンチオンが検出され、2羽が中毒死と断定された。フェンチオンは、国内では家庭や農業で、原液を数千倍に薄めてシロアリ駆除などに広く利用されている。放牧地の堆肥(たいひ)置き場などでは、ウジなどを殺すため、原液をあまり薄めず使用することがあるという。(3/15読売新聞報道)
 
農水省が減農薬指針案
   農水省は14日、減農薬農業を推進するため、「総合的病害虫管理」(IPM)の指針案を まとめた。5月に指針を決定する方針。都道府県には指針を基に対
策を策定してもらう。指針案は(1)害虫が発生しにくい農地をつくる(2)発生を速やかに把握する(3)害虫が発生した場合、効果 的に除去する−−などの病害虫対策を総合的に進めることが大切と指摘。具体的対策として天敵や防虫ネットのほか、雌のにおいを出すフ ェロモン剤の散布による昆虫の交尾防止、同じ作物ばかりつくると害虫が発生しやすくなるため、積極的に輪作する−などを挙げた。IPMは欧米で約40年前から提唱されている。(3/14共同通 信)
 
受動喫煙に診断基準案
 

 たばこ問題に取り組む「日本禁煙推進医師歯科医師連盟」の医師らが、受動喫煙による健康被害の診断基準案を日本で初めて作成した。非喫煙者の症状が、受動喫煙の影響かどうかを判断する目的。医師らは来年2月までに「日本禁煙学会」も設立予定で、受動喫煙被害者の早期治療や救済、職場環境の改善などを訴えていく。受動喫煙の健康被害を「受動喫煙症」と新たに定義し、健康被害を6段階に分類した。さらに診断書には必要に応じて「業務中の受動喫煙で発症したと推定。緊急に環境を改善する必要あり」などと健康被害回復につながる意見も書くことにしたという。3月中にも正式決定する。 診断基準を作成した一人の杏林大の作田学教授(神経内科学)は「これまで受動喫煙被害者の立場は弱かった。被害者を支援したい」と話している。(3/5付毎日新聞)(日本禁煙推進医師歯科医師連盟のホームページ
 ※「レベル4 慢性受動喫煙症」の疾患の一つに、化学物質過敏症が含まれている。

 
横浜の高校でシックスクール
   神奈川県立保土ヶ谷高校(横浜市保土ヶ谷区)で昨年9月、雨漏りの補修のために屋上のひび割れに有機溶剤を含むコーキング剤を塗る工事を実施したところ、工事中から音楽・書道室に臭気が充満。12月2日に教室の使用を中止したが、長時間室内にいた書道と音楽の担当教員2人が頭痛や吐き気を訴え、室内に入った生徒のうち数人がのどや目に痛みやかゆみを訴えた。県教委の原因究明が遅れ、事故発生から5カ月以上たった今も同校は教室の使用を中止している。屋上の有機溶剤が天井裏に染み込んだのが原因と見られる。(3/4神奈川新聞)
 
汚れた空気、胎児に悪影響
   妊娠中の女性が汚れた空気の下で暮らしていると、赤ちゃんに染色体異常が現れやすいと、米国立保健研究所(NIH)が15日、発表した。ニューヨークの3地区の妊婦60人に測定器を着けてもらい、自動車や暖房機器の排ガスなどに含まれる多環式芳香族炭化水素(PAH)という化学物質を浴びている量 を測った。出産後にへその緒の血の白血球を調べた結果、日常的に浴びているPAHが全体の平均以下だった女性の赤ちゃんでは、白血球1千個当たり4.7の染色体異常が見つかり、PAHが平均を超えた女性の赤ちゃんでは、7.2が見つかった。がんの下地ともなる異常が目立ったという。(2/16付朝日新聞)
 
自動車工業会がシックカー対策
   日本自動車工業会は、化学物質過敏症、シックハウス症候群の一因とされるホルムアルデヒドやトルエンなどの揮発性有機化合物(VOC)について、車内濃度などに一定の基準を設け、07年度から国内で生産、販売する新型乗用車に適用すると発表した。08年度以降はトラックなど商用車にも取り組みを広げる。自動車業界が一体となった「シック・カー」対策は世界初という。自動車のシートやダッシュボードの接着剤などが原因で「不快に感じた」というユーザーの声が自工会に寄せられているため、自工会は、車内のVOC濃度が厚労省の指針を下回るよう、「車室内VOC試験方法」を策定。ドア、窓を密閉した車内でホルムアルデヒドの濃度を測定するほか、トルエンはエアコンを作動させた状態での濃度を測定するなど統一の指針を設けた。(2/14付毎日新聞
 
不法産廃で周辺住民に化学物質過敏症の疑い
   宮城県村田町の竹の内産業廃棄物処分場の不法投棄で、周辺住民に健康被害が出ている可能性があることが同県の調査でわかった。許可容量 35万立方メートルに対し、100万立方メートル余りが捨てられていた。安定型処分場には投棄してはいけない石膏(せっこう)ボードなどの廃棄物も見つかり、硫化水素が発生していた。周辺住民410人へのアンケートや医師による分析結果 では、化学物質過敏症の疑いがある人が回答者の27%に達した。処分場から500m未満の住民で訴えている割合は、500m以上の住民の1.7倍だったことも判明した。(2/4河北新報、朝日新聞)
 
毎日新聞に電磁波過敏症の記事掲載
   1/13付毎日新聞
 
イギリス政府機関、子どもの携帯電話使用に警告
   英政府の独立機関、英国放射線防護局のスチュアート理事長は、11日に発表した報告書「携帯電話と健康」に関する会見で、子どもの携帯電話使用に注意を呼び掛け、特に8歳以下には使わせるべきでないと保護者に警告した。これを受け、英国内の子ども向け携帯電話業者が自主的に販売を一時見合わせた。報告書は、携帯電話が人体に危険を及ぼすという「確たる証拠は目下のところない」が、「不確実性も残っており、はっきりするまでは予防的なアプローチが必要」とした。 PA通信によると、理事長は携帯電話の人体への影響を指摘したこれまでの研究を「完全に無視することはできない」と述べ、3〜8歳の子どもが携帯を持つことは「絶対に正当化できない」と訴えた。同時に携帯電話が防犯に有用であることを認め、14歳以下については親が判断し、使う場合はできるだけ短時間にするよう訴えた。(1/12共同通 信)(1/13付朝日新聞)
 
文科省が「きれやすい子ども」の検討会設置
   「きれやすい子ども」の原因と対処法を科学的に探るため、文部科学省は「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会」(座長・有馬朗人元文相)を発足させ、11日に初会合を開く。子どもの情動に関する横断的な検討会の設置は初めて。すぐに「きれる」子どもたちの心理の研究が進む一方、MRI(磁気共鳴画像化装置)などで、脳に刺激を与える時期によって脳の発達に変化があることが明らかになってきた。しかし、研究の分野を超えた連携は少ない。同検討会には、脳科学、精神医学、心理学、教育学などの広範な分野の専門家が参加する。半年かけて各分野の研究の進ちょく状況を情報交換する。検討結果 を踏まえ、06年度以降、客観的な診断を進めるため、子どもの脳などに関するデータ集積に取り組む方針だ。検討会委員の森則夫・浜松医科大医学部教授は「子どもたちをめぐる問題を単なる社会問題として論じるのではなく、医学と教育の専門家が総合的に対応する環境作りを進めるべきだ」と話している。(1/11付毎日新聞)(教育情報ナショナルセンターのホームページ)
 
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