CS支援センターの活動から

要望書への回答・公明党PTからヒアリング

 化学物質問題市民研究会からのご提案により、同会と当センターの両団体により、厚生労働、国土交通、文部科学、環境各大臣あてに、化学物質過敏症に係る要望書を提出することを呼びかけ、ご賛同いただいた各団体の共同により提出しました。
 厚生労働省からは電話で、環境省からは文書で回答がありましたので、ここに掲載いたします。

 なお、要望書提出に際してコーディネートをお願いした上田勇議員 (衆議院、公明党アレルギー疾患対策プロジェクトチーム座長)から、下記のような意見交換の呼びかけがあり、下記団体から4人が参加しました。(今回は急なことでもあり、時間・人数ともに限られていたので、首都圏の賛同団体にご案内させていただきました)

化学物質問題市民研究会
化学物質過敏症支援センター
アトピッ子地球の子ネットワーク
食と生活の安全を考える会

・公明党アレルギー疾患対策プロジェクトチーム(PT)によるヒアリング
・2006年3月23日(木) 午前10:30〜11:35
・衆議院第1議員会館 第3会議室
・内容:支援団体側からCS問題の現状報告と公明党への支援の要請、公明党側からの質疑と意見交換

最後に以下を要望し、検討を約束していただきました。
・省庁との話し合いの場を設定していただきたい
・今後も公明党PTとの話し合いを継続していただきたい
・アレルギー対策委員会が公明党の働きかけで実現したように、
シックハウス症候群(あるいはCS)対策委員会を設けるよう働きかけていただきたい


厚生労働省からの回答(電話で)

要望1.全国規模の疫学調査を実施し、発症者の実態を把握してほしい
これまでの厚生労働科学研究で得られた、疫学調査手法についての知見を踏まえ、調査を実施していただきたい。

【回答】15年度から17年度で研究を行っているが、それが17年度で一区切りする。18年度から2〜3年かけて、研究を新しい枠組みで進めていく予定。15,16年度分の調査研究報告は既に出している。

要望2.化学物質過敏症を病気として正式に認めてほしい
・医学界が認めていないことをその理由にしているが、その根拠は何か。どういう条件を満たせば、医学界が認めたと見なすのか。

【回答】疾病の概念は学界が決めるもので、国が決めるものではない。医学界においては、肯定的意見と否定的意見があってコンセンサスが得られていない状況にある。保険の疾病名はマスターに記載したものを使うが、医師の判断で記載されていないものも記載することが認められている。
・化学物質過敏症の科学的究明が十分でないとしても、何らかの救済策を講じてほしい。現実に患者は存在し、日々苦しんでいるのだから、その救済は国としてなすべきではないか。究明がなされるまでは何もできないというのでは、不作為の謗りを免れないのではないか。

要望3.療養施設と避難施設を早急に作るか、または既存の療養施設・避難施設への助成、療養・避難する発症者への支援を行ってほしい
被害者は化学物質の被害から逃れて住む場所がなく、路頭に迷っている状況である。キャンプ生活を余儀なくされている人もいる。
・中長期間住める療養施設と、近くで農薬が撒かれる、外壁塗装工事が行われるなどの場合、一時的に避難できる施設を各地に建設してほしい。
・NPO法人など民間が患者の要望に応じて建設した同様施設への助成をしてほしい。
・療養・避難する発症者への支援を行ってほしい。
・転地療養による効果について、厚労省の見解を示してほしい。

【回答】今の時点では、厚生労働省は対応できない。

要望4.保育園、幼稚園におけるシックスクール対策を進めてほしい
学校においてはシックスクール対策が徐々に進んできているが、保育園・幼稚園等の社会福祉施設においては、ほとんど取られていないのが現状である。予防策と既に発症した子どもへの対策を早急に講じてほしい。

【回答】幼稚園については文科省に。保育園については、雇用均等児童家庭局保育課にきいてほしい。

要望5.化学物質による被害者救済のための対策委員会を早急に発足させてほしい
以上要望した被害者救済のためには、関連省庁も交えた対策委員会が必要である。今ある関係省庁連絡会議を発展させて、患者、支援団体も含めた対策委員会を早急に発足させてほしい。

【回答】既存の連絡会議の枠組みの中で対応していきたい。連絡会議のとりまとめは、健康局生活衛生課。

要望6.予防原則に立った化学物質の使用規制に関する総合的な法律を制定してほしい
化審法によって新規化学物質は安全性が審査されて市場に出ているというが、現に私たちはその被害を受けている。また、新規以外の化学物質についてはほとんど審査されていない。さらに、農薬取締法、薬事法、食品衛生法、消費生活用製品安全法などの法律はあっても縦割り・限定的・基準が緩い等の理由で、私たちの安全は守られていない。よって、私たちの安全を有害化学物質から守る総合的な法律を制定してほしい。

【回答】化審法において新規輸入・使用化学物質については規制している。既存の化学物質については、ジャパンチャレンジプログラムによって安全性情報を収集。関係省庁で取り組みを進めていく。

環境省からの回答(文書で)

要望1.化学物質過敏症を疾病として認めること
また、化学物質過敏症に関する研究の昨年2月の報告書発表後の進捗状況と、今後の見通しについて示されたい。

【回答】環境省では、化学物質過敏症に関して平成9年度から実施していた研究を平成16年度で終了し、平成17年度からは、化学物質環境実態調査の一環として、化学物質過敏症との関連が指摘されている化学物質の一般環境中の極微量分析法の開発を進めております。なお、「疾病として認めること」の趣旨がわからないところがあるのですが、環境省において特定の病症を「疾病」として認定する事務は特に行っておりません。

要望2.公園や街路樹、庭等に撒かれる農薬等の薬剤による被害防止対策を徹底すること
公園や街路樹、庭等に撒かれる農薬(殺虫剤、殺菌剤、除草剤等)によって、化学物質過敏症(CS)を発症する者が後を絶たない。また、すでに発症した者も、これに非常に苦しんでいる実態がある。農水省から通達「住宅地等における農薬使用について」が出たが、飛散に限定され、かなりの長期間残留することやガス状になって周辺へ広がることなどが考慮されていない。また、通知が出されても学校や公園、敷地等での農薬散布を一向に改めない等の被害者からの訴えが多い。貴職として何らかの有効な対策を講じてほしい。
また、今年度、農薬飛散リスク評価使用検討調査を実施すると聞いているが、その内容と進捗状況、今後の予定についてうかがいたい。

【回答】公園等における農薬散布による被害防止対策については、農林水産省から「住宅地等における農薬使用について」(平成15年9月16日付15農安第1714号農林水産省消費・安全局長通知)を発出したところであり、農林水産省では当該通知の普及啓発については、農林水産省ホームページに掲載し、併せて毎年度、厚生労働省及び農林水産省において実施している「農薬危害防止運動の実施について」の中で更なる周知徹底を図っているほか、都道府県等により様々な機会をとらえて周知を行っており、今後とも周知徹底に努めていくと聞いております。
 一方環境省では、農薬の散布に際して周辺住民等の健康被害を未然に防止するため、平成9年度に、空中散布としての使用が多く、知見の集積が十分と考えられた10農薬について「気中濃度評価値」を設定するとともに気中濃度の実態把握を行ってきたところです。さらに、環境省では、農薬取締法に基づく「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」の制定や、農林水産省からの「住宅地等における農薬使用について」の通知の発出を踏まえ、街路樹や公園の花木類の管理のために市街地において散布された農薬の飛散リスク評価・管理手法の開発を行うため、今年度より5ヶ年計画で「農薬飛散リスク評価手法等確立調査事業」を開始したところです。
 本年度は、自治体での防除実態把握のため、人口10万人以上の自治体に対し、防除実態等(防除方法、使用農薬等)についてのアンケート調査等を実施しているところです。
 来年度以降は、本年度把握した防除実態を踏まえ、モデル的に、公園等でのモニタリング調査を実施し、曝露実態を把握した上で適切なリスク評価・管理手法を開発することとしており、この取組を通じて住宅地等における農薬の飛散リスクの削減に努めて参ります。

要望3.野焼きの取り締まり強化と周知徹底をはかること
化学物質過敏症患者は、野焼きにひじょうに苦しめられている。空気のきれいな郊外にと考えて避難してきたのに、野焼きされると居場所がない。農家の野焼きは自然物については禁止されていないが、稲わらやもみがら焼きの煙に、ぜん息などの原因となる化学物質が含まれていることが明らかになっている。よって、農家の野焼きはすべて禁止してほしい。また、国民全てに対して、野焼きは禁止されていること、環境への影響と被害を受ける者がいることを周知徹底してほしい。

【回答】もとより廃棄物処理法において処理基準に適合しない処理については、違法行為であったところですが、平成12年の法改正において、基準に適合しない焼却について、全面的に禁止することにより規制を強化し、さらに、平成16年の法改正において罰則のさらなる強化を図ったところです。
 しかしながら、農業を営むためにやむを得ないものとして、従前より行われてきた農業者が行う稲わらやもみ殻などの焼却については、罰則により取り締まりをすべき違法焼却の対象ではないものとして例外的な取り扱いとしているところです。
 農業における稲わらやもみ殻などの焼却については、国が全国一律に、犯罪行為として処罰すべきものとするのではなく、地域において農家と周辺住民の方々の間でコミュニケーションが十分にとられ、農家においても、地域社会の一員として迷惑を周辺におよぼさないよう配慮されることが適切なものと考えております。
 こうした地域に密着した問題については、関係者間で解決や困難な場合には、地方公共団体において必要な対応がなされるべきものですが、国としても、違法な焼却については厳格な対応をとるよう地方公共団体に促すほか、有用なバイオマス資源でもある稲わらやもみ殻などの利活用については、たい肥化等のさまざまな取組がなされてきていることを踏まえ、技術開発を促進することにより、これを拡大し、野焼きを減らしていくことにも繋げていきたいと考えています。

要望4.印刷工場、化学工場、機械工場、クリーニング店等からの有害ガス・悪臭等による被害対策を講ずること
印刷工場等からの排出ガス等によって健康被害を受ける者が続出している。これら工場等からのVOCの排出抑制対策が始まったが、中小工場は規制の対象外とされている。しかし、周辺住民が被害を受けるのはむしろ中小業者の施設である事が多い。したがって、中小工場等からの排出を減らすよう有効な対策を講じてほしい。

【回答】浮遊粒子状物質及びオキシダントの問題に対処するため、平成16年に大気汚染防止法を改正し、揮発性有機化合物(VOC)の排出量の大きい工場・事業場に対する法にする規制と中小業者を含めた各事業者の自主的な取組を適切に組み合わせること(ベスト・ミックス)により、排出抑制の取組を進めることとなりました。平成18年4月から規制が始まるところです。
 揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制対策は、これまでの自主的取組のノウハウを活かして自主的取組を促進するという新しい考え方に立つものです。
 自主的取組のあり方については、現在中央環境審議会の専門委員会で検討しているところです。
 なお、将来、仮に、排出削減目標に照らしてVOCの排出削減が十分でないという自体が生じた場合には、取組状況をレビューし、規制と自主的取組の組合せの仕方を見直すこととしています。

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