CS支援センターの活動から
航空機への西ナイル熱蚊対策について厚労省、検疫所に要望と質問を提出
 厚労省結核感染症課から各検疫所に対し、西ナイル熱蚊対策ガイドラインとともに、北米からの航空機全便に殺虫剤を散布することと理解できる課長通知が送付されたことから、反農薬東京グループと共同で、厚労省(7月7日)、各検疫所(7月11日ほか)に、要望または質問を提出しました。

課長通知

健感発第0701001号
2003年7月1日

各 検疫所長 殿

健康局結核感染症課長

北米地域から来航する航空機へのウエストナイル熱媒介蚊対策の指導について

 ウエストナイル熱の媒介蚊対策については、これまでも種々対応いただいているところですが、今般、平成14年度厚生労働科学研究において、「ウエストナイル熱の媒介蚊対策のガイドライン作成に関する研究(注)が行われ、国内における媒介蚊対策と共に、航空機内における蚊の防除法についても検討が行われ、別添の報告書にその結果が取りまとめられたところです。
 つきましては、貴所において、北米等のウエストナイル熱流行地域から来航する航空機の媒介蚊対策を実施するにあたては、本報告書の記述を参考に、下記のとおり航空会社等への指導等、必要な対応をよろしく御願いします。
 なお、本報告書については、別添のとおり各自治体をはじめ関係機関にも通知し、国内における媒介蚊対策の参考とするよう周知しているところですが、貴所においても、別添通知に留意の上、対応願います。

  1. 航空会社に対し、ウエストナイル熱の媒介蚊が航空機により運ばれる可能性があることを周知し、平素より自主的な媒介蚊対策を行うよう指導すること。
  2. 貴所が実施する媒介蚊調査の結果、北米より来航する航空機内に蚊が発見された場合は、当該航空会社に対し、蚊の駆除を指導する等とともに、再発防止のために必要な媒介蚊対策を講じるよう指導すること。

厚労省への要望書

2003年7月7日

厚生労働省健康局結核感染症課 御中

特定非営利活動法人化学物質過敏症支援センター 理事長・横田 克巳
反農薬東京グループ 代表・辻万千子

航空機への西ナイル熱媒介蚊対策に関する要望

 去る7月1日、貴課より「北米地域から来航する航空機へのウエストナイル熱媒介蚊対策の指導について」という課長通知が、各地の検疫所長に出されました。
 航空機に関しては、貴省研究班の「ウエストナイル熱媒介蚊対策に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」)では、WHOの勧告に準じた処理方法として20頁に具体的な方法が示されていますが、これは、私たちが懸念する殺虫剤スプレー使用によるものであり、それ以外の方法は何も記載されていないため、該当地区からの航空機について、蚊の有無を確認することなく、すべて殺虫剤処理をせねばならないと解釈できるものです。
 アメリカでは、環境保護団体NCAPが、下記の資料のように航空機内での殺虫剤散布の危険性を警告しています。(PDFファイル 反農薬東京グループの記事
 わたしたちは、6月10日にウエストナイル熱媒介蚊対策として、生活環境でのやみくもな殺虫剤散布に反対して要望しましたが、さらに、航空機対策について以下の要望と質問をいたします。お忙しいところを恐縮ですが7月17日までに文書で回答をお願いいたします。

要 望

1,航空機のような気密性の高い空間での殺虫剤使用を前提とした蚊対策はやめ、他の物理的手段を検討する。
例(1)ガイドライン資料集にあるトラップ類等。
 (2)機内への蚊侵入を防ぐため、入り口付近に、機内から外に強制送風する装置を設けるなどの検討を積極的に行う。
2,万一、殺虫剤を使用せざるを得ない状況にあっても以下の点を徹底してください。
(1)着席中の客室への散布はやめる。
(2)農薬使用情報(薬剤名、その毒性、処理日時、化学物質過敏症患者への注意等)を乗客や乗務員へ提供する。

質 問

  1. 機内における蚊の捕集調査結果を明かにされたい。そのうち、人の血を吸う恐れのある蚊の比率はどの程度か。
  2. WHOの1998年の勧告では、昆虫防除のための3つの方法が挙げられているが、ガイドラインで、搭乗前処理と残留噴霧処理の2方法の実施を求めることにしたのは何故か。また、この2方法のいずれかの実施を求めているのか。それとも、2方法を同時に行うことを求めているのか。
  3. ガイドラインでは、ペルメトリン、フェノトリンを含有する殺虫剤スプレーの使用を求めているが、これらの薬剤の毒性はどのようなもので、人体症状についてはどのようなものと認識しているか。
  4. ガイドラインに「出発1時間以内、旅客が搭乗する前に、機内空調をとめて、客席は、1秒1歩の速度で歩行しつつスプレーすること。トイレ・衣服ロッカーは2秒噴射、乗員休息区域・フライトデッキは3秒間噴射する」という処理方法を示された根拠はなにか。この時、1機あたりに散布される殺虫剤量はどの程度か。
  5. さらに、配膳区域を除き、乗員室、客室、貨物室等を8週間毎に殺虫剤の残留噴霧処理をするとあるが、1回につき、どのような薬剤がどの程度の量使用されるか。
  6. 上記のような殺虫剤処理で、機内の空気中の殺虫剤濃度はどの程度になるか。気中濃度の経時変化を示されたい。使用される薬剤の使用状況(殺虫剤の種類、使用方法等)に応じた調査結果があれば乗務員室、客室、貨物室別に願いたい。
  7. 通常、家庭内で殺虫剤スプレーを使用する場合、使用後、一定時間密閉し、その後、換気することが求められるが、航空機内の換気と、殺虫剤気中濃度の関係はどうなっているか。殺虫剤スプレー後の換気や、乗員・乗客の立ち入り禁止期間を設けていないのは何故か。
  8. 殺虫剤処理は、1フライト毎に実施するとすれば、殺虫剤散布は継続的に実施されることになる。特にペルメトリンは低蒸気圧で、機内の座席や床・壁面など付着したものが蓄積する恐れがあり、肌に触れたり、乳児がなめたりすることも考えられるが、座席や壁面の殺虫剤付着量はどう変化しているか。
  9. 機内での殺虫剤処理による食品の二次汚染はないか。
  10. 殺虫剤散布により、乗務員や乗客の影響調査や健康被害がでた例があれば、示されたい。
  11. 殺虫剤を使用する旨の乗員・乗客への告知、使用する殺虫剤の人体毒性の乗員・乗客への周知、健康被害がでた場合の対処方法はどうなっているか。
  12. 離陸前の殺虫剤処理が確認されていない場合の検疫所の対応はどうなるか。乗客・乗員の居るところでの殺虫剤散布もあるのか。
  13. 該当殺虫剤が貨物室等の農作物に付着した場合、食品衛生法違反となる場合が、考えられるが、どのように対処されるか。
  14. WNV以外に、日本脳炎、マラリア、その他、蚊が媒介する感染症の発生国からの航空機の場合も、同じような殺虫剤処理を求めているのか。

検疫所への要望書

2003年7月11日

○○検疫所長様

特定非営利活動法人化学物質過敏症支援センター 理事長・横田 克巳
反農薬東京グループ 代表・辻 万千子

 私たちは、化学物質過敏症の患者や、患者の支援団体、または、化学物質による健康被害や環境汚染をなくすことを目指して活動している団体です。
 平素より、検疫業務にご尽力いただき、ありがとうございます。

 ところで、去る7月1日、厚生労働省健康局結核感染症課より、各検疫所長宛てに「北米地域から来航する航空機へのウエストナイル熱媒介蚊対策の指導につ いて」という課長通知が出され、既に受け取っておられることと思います。

 この通知では、ウエストナイル熱媒介蚊が運ばれる恐れのある発生地経由の航空機について、航空会社に媒介蚊対策を講じるよう、検疫所が指導することになっています。

 私たちは街中での蚊対策については、別添資料@のように、厚生労働省に安易な殺虫剤散布をしないよう要望してきましたし、航空機での殺虫剤処理につい ても、7月7日付けで厚労省結核感染症課に以下の要望をしました。

<厚労省結核感染症課への要望(質問略)>------------------------------------
 去る7月1日、貴課より「北米地域から来航する航空機へのウエストナイル熱 媒介蚊対策の指導について」という課長通知が、各地の検疫所長に出されました。
 航空機に関しては、貴省研究班の「ウエストナイル熱媒介蚊対策に関するガイ ドライン」(以下、「ガイドライン」)では、WHOの勧告に準じた処理方法とし て20頁に具体的な方法が示されていますが、これは、私たちが懸念する殺虫剤ス プレー使用によるものであり、それ以外の方法は何も記載されていないため、該当地区からの航空機について、蚊の有無を確認することなく、すべて殺虫剤処理をせねばならないと解釈できるものです。
 アメリカでは、環境保護団体NCAPが、下記の資料のように航空機内での殺虫剤散布の危険性を警告しています。 (PDFファイル 反農薬東京グループの記事
 わたしたちは、6月10日にウエストナイル熱媒介蚊対策として、生活環境で のやみくもな殺虫剤散布に反対して要望しましたが、さらに、航空機対策につい て以下の要望と質問をいたします。お忙しいところを恐縮ですが7月17日までに 文書で回答をお願いいたします。
1,航空機のような気密性の高い居住空間での殺虫剤使用を前提とした蚊対策はやめ、他の物理的手段を検討する。
 例(1)ガイドライン資料集にあるトラップ類等。
  (2)A機内への蚊侵入を防ぐため、入り口付近に、機内から外に強制送風する 装置を設けるなどの検討を積極的に行う。
2,万一、殺虫剤を使用せざるを得ない状況にあっても以下の点を徹底してください。
 (1)着席中の客室への散布はやめる。
 (2)農薬使用情報を乗客や乗務員へ提供する。
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そこで、貴検疫所に以下の点をお尋ねしますので、ご回答のほどよろしくお願い します。

質 問

  1. 殺虫剤を使用しない方法を求めていますが、貴所は、どのようにお考えですか。
  2. 航空会社に対して、どのような指導をなさるのか、具体的な内容を教えてくださるようお願いします。また、指導文書があれば、それをお示しください。

【別添】
資料1 感染症課への要望6/10
資料2 ガイドライン配布先への要望7/1


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