西ナイル熱の蚊対策ガイドラインについて都道府県などへ要望書を提出

 

 同ガイドラインの配布先となった自治体などに対して、各団体共同で要望書を提出しました。提出先と提出日は、都道府県、政令指定都市、中核市、保健所設置市(7月1日)、東京23区(7月2日)、地方衛生研究所(7月4日)、防疫所(7月4日。一部は同日以降)です。
2003年7月1日
都道府県知事   各位
政令指定都市市長 各位
中核市市長    各位
保健所設置市市長 各位

西ナイル熱媒介蚊対策についての要望書

 私たちは、化学物質過敏症の患者や、患者の支援団体、または、化学物質による健康被害や環境汚染をなくすことを目指して活動している団体です。
 平素より、住民の健康増進のためご尽力いただき、ありがとうございます。

 このたび厚生労働省より「厚生労働科学研究で取りまとめられたウエストナイル熱の媒介蚊対策に関する参考図書の配布について」(健感発第0618002号 平成15年6月18日)という厚生労働省結核感染症課課長通知と「ウエストナイル熱媒介蚊対策に関するガイドライン」が送付されたことと思います。

 厚労省によると、西ナイル熱はウイルスを持った鳥などを刺した蚊に刺されることにより人へ感染するとされています。感染した人の80%は発症せず、発症者の1%が重症化して脳炎などになり、重症患者の3〜15%が死亡に至るとのことです。発症率、死亡率は高くはありませんが、ワクチンや治療方法がないため、十分な対策を講じる必要があるとされています。

 しかし、本ガイドラインが主な対策として示した殺虫剤散布は極めて限られた効果しかなく、過剰・不適切な散布は健康被害を発生させるだけで、西ナイル熱の対策にはなりません。アメリカでは徹底的な殺虫剤散布を行いましたが、3年で全米に拡大したとのことです。

 にもかかわらず、本ガイドラインは、西ナイル熱媒介蚊対策として、殺虫剤使用を強調しています。毒性が高い有機リン系殺虫剤などを使用することとし、中には空中散布まで検討するという記述があります。
 本ガイドラインを作成した研究班のメンバーは感染症研究者やPCO(害虫防除業者)関係者が多い半面、化学物質による健康被害に詳しい専門家がおりません。このため、PCOの考え方が色濃く反映されているのに対し、 殺虫剤による健康被害の恐れについて触れられていません。

 殺虫剤等の安易な散布により健康被害を受ける人々は確実に増加しています。私たちは、そのような人々への配慮のない通知は出すべきでないと厚労省に要望し、国会でも取り上げられました。
 その結果、厚労省は、「厚労省の文書として扱わず、厚生労働科学研究の報告書という形で参考として配布する。課長通知で、過剰な殺虫剤散布を戒める」として、都道府県等に配布してしまいました。このような対応は、研究班に責任を押しつけ、厚生労働省自らの責任をあいまいにするものとも言えます。

 厚労省は、国会答弁で、また、私たちへの説明の中で、「本ガイドラインは殺虫剤の使用を推奨するものではない」旨、述べています。
 また、課長通知には、平素からの蚊対策として、蚊のサーベイランスや、蚊の幼虫の発生源をなくすことが重要であり、ウイルスナイル熱の流行拡大が懸念される場合であっても、安易な化学物質の空中散布等では十分な効果が期待できず過剰な化学物質の使用になると、明記されています。
 厚労省によるこれらの補足説明があってもなお、本ガイドライン自体が殺虫剤の使用を奨励していることに変わりはありません。

 すでに殺虫剤等の農薬による健康影響の恐れについて研究され、対策を講じておられる自治体もございますが、これまでの国内の状況は総じて、O157、新型肺炎など、新たな感染症発生などのたびに、過剰・不適切な殺虫剤散布が行われ、健康影響が引き起こされてきたパターンが多いように見受けられます。

 私たちが厚生労働省に提出した要望書をお送りいたしますので、その趣旨をご理解いただき、西ナイル熱対策名目などによる過剰・不適切な殺虫剤散布が行われないよう、そして、殺虫剤散布による住民への健康被害が発生しないよう、十分にご配慮くださいますよう、お願い申し上げます。

添付資料:厚労省への要望書

要望者・団体(五十音順。要望者(個人)名と、団体の代表者名は省略)
アトピッ子地球の子ネットワーク
天草の海からホルマリンをなくす会
個人(北海道恵庭市)
アレルギーを持つ人のひまわりの会
個人(北海道千歳市)
個人(横浜市)
個人(佐賀県)
いもづるねっと
江別環境広場
江別きれいな風の会
遠州ゴルフ場農薬汚染を監視する会
岡山パンプキンコーチ
沖縄アレルギーを考えるシーサーの会
個人
化学物質不耐症を考える会
化学物質問題市民研究会
個人(北海道千歳市)
個人(佐賀市)
環境過敏の子供を持つ親の会
環境研究会
環境の会
環境病患者会
環境ホルモン汚染をなくす会
関西eグループ
岐阜市政を考える女性の会
岐阜人FORUO
岐阜ぜんそく友の会
岐阜・2001年の会
個人(愛知県南知多町)
健康を考える会
コスモスふぁーむ
〜子ども・地球・未来を守りたい〜親たちの声ネットワーク「未来」
子供の環境を守る会
子どもの健康と環境を守る会
埼玉県環境管理ネットワーク
サイレントスプリング
栄工場のゴミを考える会
サスティナブル21
個人
CS患者会
シグナルキャッチ
自然農を学ぶ会
自然を楽しむ会
個人
食政策センタービジョン21
個人
個人(静岡県藤枝市)
健やかな命のための生活講座
生態系を生かした樹木管理を考える市民の会
個人(北海道千歳市)
個人(北海道虻田郡)
個人(長野県丸子町)
個人(茨城県土浦市)
個人
電磁波被害者クラブ
特定非営利活動法人化学物質過敏症支援センター
豊橋有機農業を考える会
とりのさと農園
個人(千葉市)
ナチュラルクッキングの会
日本消費者連盟関西グループ
日本野鳥の会遠江支部
個人
浜松アトピーの会
浜松市民ねっと
反農薬東京グループ
個人(兵庫県川西市)
個人(埼玉県飯能市)
個人(福岡県八女郡)
VOC-電磁波対策研究会
フォー・ザ・チルドレン
個人(石川県柳田村)
個人
まどか文庫
個人(横浜市)
無農薬茶の会・消費者
個人(香川県内海町)
横浜・ゴミを考える会連絡会
横浜土を守る会
ナギの会
個人(神奈川県横須賀市)
個人(神奈川県横須賀市)
わし沢里山の会

世話人
特定非営利活動法人化学物質過敏症支援センター 理事長・横田 克巳
反農薬東京グループ 代表・辻万千子

 

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