会報第6号(2002.5.15)

 

中伊豆町 脱化学物質コミュニティーの創設
    尾竹 一男 (尾竹一男建築事務所代表、CS支援センター理事) 
  静岡県中伊豆町の姫之湯という場所に、「衣・食・住」+空気の環境で脱化学物質を目指す、「脱化学物質コミュニティー」(仮称)づくりがスタートします。
 CS支援センターの3月の理事会でプロジェクトの設置が決まり、約1170坪(3,865m2)の土地を購入すべく、手続きが始まりました。第1期として、その土地に単身者用4世帯と2人用4世帯の、計2棟の共同住宅建設を予定しています。今年の終わりか来年初めごろの完成を目指します。
 有害化学物質を出来る限り使用しない住宅で、全てとは言えませんが、過敏症の患者さんの使用に対応できるように配慮していきたいと考えています。
 患者さんの収容施設であるサナトリウムではなく、環境病と言われるアレルギーの人や、そういう病気を持たない大人や子供も相互に理解し協力し合うことで、ここに住めば患者さんも普通の人として生活できるコミュニティーづくりを目指したいのです。
 無農薬の食材づくりや、環境を汚染しないエネルギーの使用、相互に支え合えるバックアップシステム、学校や医療施設等と、課題は山積みですが、いろいろな人たちの参加と協力により、一つ一つ前向きに進めていきたいと思っています。
 次のステップとして、第1期の用地に隣接する姫之湯部落の共有地へのエリア拡大や、希望する患者さんが戸建てを建設できる用地の用意もしたいと考えています。
 そして、ゆくゆくは、用地のふもとを流れる大見川に接した場所を含めたグランドデザインをはじめ、姫之湯部落への広がりに期待しています。

シックハウス対策のための法制度の動向
  「建築基準法改正」に係る取り組みと今後の課題
 小林 幸治 ((特非)市民がつくる政策調査会事務局長、CS支援センター理事)
 

 本誌4・5号でも掲載されました、シックハウス予防対策のための法律について、その現況と課題などについて報告します。
 現在開会中の通常国会に、政府提案(国土交通省所管)の「建築基準法改正案」と民主党(議員立法/発議者:櫻井充参議院議員ほか)提案による「特定化学物質による建築物の居室内の空気汚染の防止等に関する法律案」が参議院に提出されました。国土交通委員会では、CS支援センター理事の尾竹一男さんをはじめ3名による参考人意見陳述も行われました。これまでの審議では、建材規制である政府案(入口規制)に対して建築後の濃度測定による規制の民主党案(出口規制)、この点が大きな争点とされ論議されました(両案の内容については、本誌4・5号をご覧下さい)。その審議は大変白熱しており、質問内容も本質を突いたものが多く、審議等を通じてシックハウス対策に関する委員の認識が深まっているように思いました。
 今回の「建築基準法改正案」および「シックハウス対策法案」の国会審議に先立ち、3月12日には「『シックハウス対策』法制化促進シンポジウム」と題した緊急シンポジウムを江田康幸衆議院議員(公明党)、櫻井充参議院議員(民主党)、瀬古由起子衆議院議員(共産党)、武山百合子衆議院議員(自由党)の参加のもとに開催しました。研究者や市民団体、行政からは、東大の柳沢幸雄教授、尾竹さん、網代さん、国土交通省の杉藤崇さんをパネリストに須田春海さん(CS支援センター理事)のコーディネートにより法案の内容などについて議論しました。当日お越しいただいた北里研究所病院の石川哲さんにも、急遽パネリストとしてご参加いただきました(4月14日付東京新聞に掲載)。
 今回提案されている両案は、シックハウス症候群をはじめとする化学物質過敏症対策にとっても、ようやく1歩目を踏み出したものだと思います。しかし、その内容はシックハウスの“予防”のための対策であり、すでに発症している方々に対する医療・治療・療養などの対策や、依然として防蟻事業者が野放しにされていることなど、今後の課題も多く残されています。このような点については、委員会審議でも質問されていますが、その答弁のほとんどはあいまいなものになっています。

 「改正案」は6月にも成立 
 今後は委員会・本会議での採決を経て、衆議院に送られます。順調に進めば5月初旬(連休明け)には衆議院での審議がはじまり、6月中旬(予定)の国会閉会までに成立する予定です。施行は1年以内とされています。
 今後も継続して「発症者対策のための措置を」、「防蟻事業者の対策を」、「濃度測定の実施の簡素化を」、「ビル等の管理にも化学物質対策を」などを要望するとともに、国会決議などへの提案・働きかけなどを行いたいと思います。
 また、国会審議の傍聴も多くの方々に行っていただき、自分の目で審議状況を見ていただければと思います。
 法律の制定後には、その内容の報告とその後の課題などについて、再度報告いたします。

 

 

 

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