会報第1号(2001.5.17) 

 

共同研究者のごあいさつ
   旭川市の「化学物質過敏症一時転地住宅」完成、および、当法人のNPO法人認証にあたり、同住宅の共同研究者の皆様から、ひとことごあいさつをお寄せいただきました。(お名前の五十音順)

■北里研究所病院  臨床環境医学センター長
 石川 哲さん

 旭川転地住宅完成を祝す 
 旭川市は約15年近く前から「医療休養基地構想」で市民の健康保持構想に積極的に行動してきた。地元には旭川医科大学、旭川市民病院そして医師会、旭川市という医療供給基地がある。加えて清涼なる空気、水、豊かな農業施設もある。私は医大創立時から講義でお世話になっていたが、もしもこの土地に化学物質の過敏反応による治療施設が完成すれば、例えば、東京、大阪などの過密都市で悩む患者の救済が出来ると信じて疑わなかった。これまで、私達も市と共同で研究してきた業績がトリガーとなり、全国で初めてその施設が斉藤牧場、冬総研、市の皆様の努力が実って治療施設(患者一時転地住宅・実験棟)が完成迄持っていけたことは本当に喜ばしいことである。幸いNPO法人化学物質過敏症支援センターの方々がその運営を手伝って下さることとなった。この施設に入居される方々も、現在まで関連する方々がどれだけ努力をして苦労をし、今回の完成にこぎ着けたかを良く理解して頂くこと、そして患者さん方も日々自己の健康の向上に対する努力をしながら、1日も早く快方に向かって頂くことを願って止まない。施設の完成を心からお祝い申し上げます。


■旭川医科大学 産婦人科教授
 石川 睦男さん

 化学物質過敏症の旭川医科大学での取り組み 
 化学物質過敏症支援センターがNPOとして認証され、本格的に活動されることになった機会に、私達の本症に対する取り組みにつき一言述べさせていただきます。臨床環境医学会を通して、北里大学の石川哲教授の御指導の下、化学物質過敏症やシックハウス症候群の私達の認識も少しずつ深まってまいりました。一方、旭川市の「健康の郷・大雪」の構想の実現に向けて旭川医科大学の一員として策定に参加して参りました。その中で、斉藤牧場の中に一時転地住宅(実験棟)が設立され、旭川に転地療養のために、患者用住宅に滞在するシックハウス症候群の患者さんの転地療養の評価のため、医学的に経時的変化を追跡する必要に迫られております。本学では旭川医科大学シックハウス症候群検討委員会を4月24日に発足の会をもちました。構成は衛生学、公衆衛生学、内科学第3、皮膚科学、眼科学、産婦人科学の講座です。また、旭川シックハウス症候群研究会も旭川市と共同で立ち上げる予定です。今後、北里研究所病院と共同で本症の研究を推進していこうと思います。


■旭川市 企画部長
 小池 語朗さん

 旭川市の取り組みについて 
 化学物質過敏症支援センター様がNPO法人として正式に認可され、この度会報第1号の発行となりますことをお喜び申し上げます。
 本市は昭和63年に「医療休養基地構想」を立ち上げ、圏域2市8町とともに自然環境や医療集積を活用した新たな圏域づくりの取り組みを進めています。この構想の大きな特徴の一つに、化学物質過敏症やシックハウス症候群などの環境病(臨床環境医学)への取組があり、これまでも北里研究所病院の先生方をはじめ、産官学の連携をしながら推進してきたところですが、平成12年12月に国内初の化学物質過敏症患者用住宅が市内にある自然牧場内に竣工になりました。
 今後はこの住宅を拠点に事業の推進を目指してまいりますので、貴センターとの一層の連携をお願いいたしますとともに、疾患に苦しむ患者たちの光明として、貴センターが更に発展されますことをご祈念申し上げメッセージといたします。


■横浜国立大学大学院  環境情報研究院助教授
 中井 里史さん

 患者に明るい展望を 
 いまさら言うまでもありませんが、化学物質過敏症は、いつ、どこで、誰が罹ってしまうかわからないという特徴があり、万一罹ってしまった場合には、周囲の人の理解や協力を得た上で治療・療養を行うことが必要です。が、残念ながら、私たちの力不足などもあり、未だに何をどうしたらよいのか、といったようなことが患者さんのみならず、サポートする方にもうまく伝えられない状況にあると思っています。
 今回旭川に短期滞在型療養施設が建てられました。実験施設としての意味合いもあるため、今後改善すべき点がでてくるやもしれません。しかし、このような施設ができた、ということ自体は患者の方、患者を支援される方、さらにわれわれ研究者にとっては大きな前進であると考えます。今後ここでの経験や研究を踏まえた上で、患者さんにとって明るい展望が開けていくことを切に望んでやみません。というよりも、どんな小さなことであろうと何であろうと、こじ開けていかなければならないと考えています。


■冬生活総合研究所 創始者
 山口 昭さん

 地域で循環する生活づくり 
化学物質過敏症研究住宅を建設したことに対しての問い合わせや励ましの言葉など、その反響の大きさに驚いています。
 我々が化学物質過敏症の共同研究に参加したのは、住環境をめぐる現状が危険な状況だと感じていたからです。幸福への願いを込めて建てられた住宅が、病気や不幸の原因になっている矛盾に大きな怒りを感じているのです。
 地域を見ると、例えば遠く離れた外国の木や鮭が地元の北海道産より安く輸入され、地域のものが活用されていないという、歪んだ経済・社会構造がある。そうした利益優先の構造が地域をだめにし、人災とも言える病気の山を築いているのです。
 私はバイオ・リージョン(生命地域)の実践をし続けてきましたが、今回の住宅建設は、地域の素材を活用し、自然に調和し、地域で循環する生活づくりの面から社会の役に立ち、この現状を何とかしたいとの強い思いが込められています。

 

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