化学物質過敏症の予防・対処法  (2006年1月修正)

 

 当センターが発行している「化学物質過敏症ハンドブック」の内容を、ここに掲載します。
「化学物質過敏症ハンドブック」は、A5判の扱いやすい大きさで、厚手のケナフ紙と大豆油インクを使い、ヒモを通せる穴を開け、身近に置いて何度でも読み返せるようにしました。
ご希望の方は、一部200円(送料別)でお分けいたしますので、CS支援センターへご連絡ください。
(内容は、ここに掲載されているものと同じです)


化学物質過敏症ハンドブック(第2版)

 

 この冊子は、化学物質過敏症の発症を予防し、また早期の回復を目指すための一助として、一般的に必要だと思われることをまとめたものです。

 お手元に置き、繰り返しご覧になられることをお勧めします。

 

本冊子の利用上のご注意

 このハンドブックは、発症された方のお話や化学物質過敏症の研究者など、実際にサポートしている方々のご意見をもとに、できるだけ多くの方に対応できるように作成いたしました。しかし、この病気の特徴として、反応する物質など発症者によって個人差が大きいことがあります。従って、具体的な対処法につきましては、ここに書かれていることを参考に、ご自分で工夫して行うことが必要となるかもしれません。より詳しくお知りになりたい方は、CS支援センター等の相談窓口や関連書籍などをご利用ください。

 また、よりよいものを作成していくために、何かお気づきの点等がありましたらご連絡をいただければ幸いです。

 なお、発症した方々が食べたり使うことが出来た実績のある食品、生活用品や、その入手先などをまとめた「食品・生活用品リスト」をCS支援センターで発行しています。ぜひご購入され、あわせてご活用されることをお勧めいたします。

化学物質過敏症支援センター

●目 次

1.対処法・生活の仕方

1)対処法・生活の仕方の基本…1

2)身体に取り込む化学物質の総量を減らす…2

(1)自宅(の空気質、環境)が原因であり、他に居場所がある場合は、原因の家から出る…2

(2)室内の換気を徹底する(冬でも頻回に行う)…2

(3)身の回りにある化学物質はできるだけ早く戸外に出して処分する…2

(4)居住空間における化学物質の揮発を最小限に抑える…3

(5)食物はできるだけ自然食品をとる…5

(6)水道水に含まれる化学物質の除去…6

(7)生活用品に注意する…6

(8)食品の包装・容器…7

3)体内に蓄積された化学物質の分解・排出を促進する…9

(1)身体の新陳代謝を促進し、汗をかく…9

(2)有害物質の排出・解毒のためにビタミン・ミネラルをバランスよくとる…9

4)規則正しくストレスの少ない生活により身体機能を改善する…11

(1)規則正しい生活をするよう心がける…11

(2)生物的ストレスの除去…11

(3)電磁波をできるだけ避ける…11

(4)精神的ストレスを軽減する…12

2.医療機関での治療

(1)化学物質過敏症の治療…13

(2)他の病気・歯科疾患の予防を…13

3.さらなる情報

(1)書籍…14

(2)相談窓口…14

付録16  □参考文献20


 

1.対処法・生活の仕方

 

1)対処法・生活の仕方の基本

 

@身体に取り込む化学物質の総量を減らす

A体内に蓄積された化学物質の分解・排出を促進する

B規則正しくストレスの少ない生活により身体機能を改善する

 

※以上はすべて一度に実行しようとすると大変ですので、できるところから少しずつ行ってください。なお、できるだけ早く実行した方が良いものには◎印をつけました。

 

 この病気の予防法は、発症した方の対処法・生活の仕方と基本的には同じです。身体に取り込む化学物質をできるだけ減らすなど、ここに示したことを参考にして生活することで、発症を予防できる可能性が高くなると思われます。

 

2)身体に取り込む化学物質の総量を減らす

 

(1)◎自宅(の空気質、環境)が原因であり、他に居場所がある場合は、原因の家から出る

 自宅にいると症状が出るが、親戚や友人の家などに行けば症状が出ず、滞在が可能な場合は、とりあえずそこへ避難しながら、自宅についての対策を行ってください。

 職場等が問題となる場合も対処方法は同じですが、医師などの助けも借りて、環境改善を訴えていくことが必要でしょう。

 

(2)◎室内の換気を徹底する(冬でも頻回に行う)

@風の通りをよくするため、家の反対側となるような位置で2箇所以上の窓や換気口を開けましょう。

・外の空気が良いことが条件です。

 

 A換気扇をうまく活用しましょう(トイレ・浴室・台所など)。

・換気扇をつけ、そこから離れた窓を開けると窓から外の空気が入ってきます。外気が良くない状態の時、また壁の中や床下、コンセントなどからの空気を吸引した場合に、体調が悪くなる時は止めてください。

 

(3)◎身の回りにある化学物質はできるだけ早く戸外に出して処分する

 以下のものがある場合は、優先的に処分しましょう。

・防虫剤(衣類用など)

・芳香剤・消臭剤(居室用、トイレ用)

・合成界面活性剤を使用した製品

例)合成洗剤(洗濯用、台所用、洗面用、歯磨き剤、トイレ用、浴室用、シャンプー、ボディーシャンプー)、柔軟仕上げ剤(リンス、衣類用)、洗浄剤(パイプ用、トイレ用、コンタクト用)、化粧品、避妊薬など

・塩素系漂白剤

・整髪料、化粧品、香水

・殺虫剤、蚊取り線香、線香

・合板の家具(刺激を感じる場合や、新品の場合)

・一般の植木・鉢植え など

 

(4)居住空間における化学物質の揮発を最小限に抑える

@必要のないものはできるだけ処分するか、屋外に出しましょう。

・屋内に置いてあるものが多くなればなるほど、それに吸着・付着している化学物質の揮発が多くなります。

・新聞、書籍にも注意が必要です。屋外で空気にさらしてインクなどを飛ばし、読む時のみ屋内に持ち込みましょう。保管する場合はポリエチレンの袋等に入れ、必要がなくなったらすぐに屋外に出しましょう。

 

A汚染されていると思われても処分できないものは、ポリエチレンの袋等で密封して保管してください。

・例えば、しばらく着ない衣類、書籍、雑貨などです。

 

 B掃除をしましょう。

・純石けん水または水拭きで拭ける所・ものを拭きましょう。また洗えるものは洗ってください。

・掃除機のごみパックは抗菌加工でないものを選びましょう。また排気に注意してください。掃除の際は出来るだけ窓を開けてください。

 

C外から持ち込むものは、外側を拭ける物は拭き、洗えるものは洗い、干せるものは干してから保管・使用しましょう。

・店内の汚れなどが表面についています。食料品の袋なども表面を水拭きした後、冷蔵庫等に保管することが望ましいです。

・ドライクリーニングされたものは、すぐに屋内にしまわず、戸外で十分干しましょう。

 

D備長炭を化学物質が発生する部屋や場所に置いておくという方法もあります。

・木炭は、空気中や水中の化学物質をある程度吸着します。ただし、吸着しきれなくなると、今度は吸着した化学物質を放散させますので、1〜2ヶ月を目安に(場合によってはもっと頻繁に)交換または煮沸・天日干しをしましょう。

※煮沸の作業は、備長炭から化学物質が揮発するため発症者にとっては危険を伴います。そのため、屋外で行うか健康な人に頼む、または使い捨てにしましょう。

 

E空気清浄機を使用した方が良い場合があるかもしれません。

・できるだけ空気清浄機を使用しなくても安全に過ごせるような居住空間にすることが第一で、一時的に空気が汚染された場合等に空気清浄機を使用して改善することが原則となります。

 

 F新品の家電品を購入・使用する際の注意・工夫について

・空気清浄機に限らず、新しい家電品は、本体のプラスチックや部品から可塑剤などの化学物質が揮発するため、それらに反応して使えないという発症者も少なくありません。そのような発症者向けに、空気清浄機は本体が金属製または陶器製のものが販売されています。

 ・新品は使用できなくても中古なら使える場合があります。その場合、発症者でない親戚、知人等が使っている家電品で大丈夫なものがあれば、それをいただいて、代わりに新品を差し上げるという方法もあります。または、新品を購入後ある程度の期間、戸外等で稼働させてから、屋内に持ち込むという方法もあります。

 

(5)◎食物はできるだけ自然食品をとる

@米、野菜、加工食品などは有機栽培(オーガニック)、無農薬・無添加のものを選びましょう(付録参照)。

・常食するもの(米、パン、お茶、調味料など)には特に注意が必要です。

 

A肉類(牛、豚、鶏など)・鶏卵は、安全な飼料で健康な育て方をされたものを選びましょう。

・一般的に配合飼料(農薬使用・遺伝子組み換えの穀物等が入っている)で育てられ、抗生物質や成長ホルモン剤等の薬剤が多く使用されています。

 

B魚介類は、天然のものやそれを自然塩のみで加工したものを選びましょう。

・一般的に保存性を高めるために塩素処理を行い、酸化防止剤などを使用するとともに、見た目を良くするためにも食品添加物が使用されています。また、養殖魚では抗生物質や抗菌剤等の薬剤を多用していることが多いと言われています。

 

C安全を重視した経営方針の食品・生活用品販売業者、または生活協同組合(生協)に加入すると、安全性の高い食品や生活用品を、まとめて購入できます。また、配送・宅配をしてくれる業者や生協ならば、スーパー等へ買いに行く手間が省けます。

・無農薬または有機農産物を扱っている、また合成洗剤を扱っていない(石けんを扱っている)ことなどを基準に、業者や生協を選びましょう。

 

(6)◎水道水に含まれる化学物質の除去

@水道水を飲用、調理用とする場合は浄水器に通すか、やかん・鍋のふたをとって4〜5分沸騰させ、塩素やトリハロメタン(付録参照)を飛ばしてから使用するのがよいでしょう(換気にご注意ください)。または、市販のミネラルウォーターを使用してください。

 

A風呂やシャワーにも注意が必要です。

・風呂を沸かす時に備長炭を入れるか、浄水器、浄水用シャワーヘッドを通した水を使用しましょう。また、十分に換気をしながら入浴・シャワーを行いましょう。

 

(7)生活用品に注意する

 @衣類・寝具等は、できるだけ天然素材のものを使用しましょう。

・綿や麻などを、純石けんで洗って着用・使用するのがよいでしょう。

※ただし、発症者によっては綿よりもポリエステル綿の布団や化繊の衣類の方がよいという場合があるため、ご自身で確認することが大切です。

・抗菌・防臭加工、撥水・防水加工、防ダニ加工、形態安定加工には薬剤が使用されていますので、避けてください。

 

 A洗剤類について(付録参照)

・合成洗剤の使用はやめ、香料、エデト酸塩などの添加物がない純石けんに替えましょう。

・石けんには、固形、粉末、液体のそれぞれの製品があります。石けんと合成洗剤の違いは、固形か粉末かなどの形状の違いではなく、成分がまったく異なるのです。石けんの成分表示は、「純石けん分」「脂肪酸ナトリウム」「脂肪酸カリウム」「石ケン素地」「カリ石ケン素地」などです。合成洗剤の成分表示は、「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム」「アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム」などです。

・「複合石けん」は、石けんと合成洗剤が混合されたものですので、使用をお避けください。

・「薬用石けん」は、「複合石けん」なので、使用をお避けください。

・ただし、石けんに反応する発症者も少なくありません。動物性原料(牛脂)や、植物性原料(パーム油、オリーブ油)など、原料の違いや、メーカーの違いによって、使えたり、使えなかったりする場合もあります。ほとんどの石けんは高価ではありませんので、いろいろと試して、ご自分に合うものを見つけてください。

・石けんを使わない洗濯の方法として、重曹、炭酸塩、または塩と炭を使う方法もあります(インターネット「石けん百科」などをご参照ください)。

・汚れが少ない場合など、石けんを使わず、お湯だけできれいになる場合もあります。石けんは、必ず使わなければならないものではないことにもご留意ください。

・石けんシャンプーの後は、専用リンスを使用するか、または、食用酢をお湯でうすめるとリンスの代わりになります。

 

 B調理器具・食器等について

・鍋はステンレス、ほうろう引、土鍋、鉄がよいでしょう。

※アルミ製、フッ素・テフロン加工は避けましょう。

・調理器具はステンレス製のものがよいでしょう。プラスチック製のものは避けてください。

・食器・保存容器はガラス・ほうろう引・陶器などで、なるべく絵柄・着色がないものにしましょう。

・ラップ類は塩化ビニル製は避け、ポリエチレン製で添加物のないものにしましょう。

※それでも、熱い物や油・酢のものを直接ラップで包むのは避けたほうがよいでしょう。

 

 C生理用品について

・一般の生理用品の使用により皮膚症状等がある方は、オーガニックコットンのナプキンが良い場合があります。

 

(8)食品の包装・容器

 以下のものは有害な成分が食品に付着したり溶け出している恐れがあるため、避けたほうが良いでしょう。

 

 @発泡スチロールやダンボールに直接入っているもの。

・どちらも形がある限り化学物質を揮発させています。

 

 A一般の缶詰。

・金属の内側に薬剤がコーティングされている場合があります。

 

Bカップ麺のポリスチレン製の容器や、ポリカーボネート製の食器や容器、アルミ製の缶飲料等、塩素系の食品用ラップも避けてください。


3)体内に蓄積された化学物質の分解・排出を促進する

 

(1)◎身体の新陳代謝を促進し、汗をかく

@身体の状態や体力に合わせ、できる範囲で運動を行いましょう。

・化学物質は体脂肪に蓄積されるため、体脂肪を減らし汗をかくことで一緒に体外に排出されます。

・空気の良いところで、ゆっくりと歩くだけでも効果があります。体力がついてきたら運動する時間や強度を徐々に高め、自分に合った適度な運動を続けることが望ましいです。少しきついくらいの強さで有酸素運動(付録参照)を約20分以上続けると体脂肪の燃焼が促進され、週3回程度は行うと効果的だと言われています。発症すると自律神経だけではなく免疫機能や内分泌機能のバランスも崩れやすくなりますが、体力をつけることで、身体の様々な機能が向上し回復に寄与します。また、気分転換により精神面への効果もあります。

 

A入浴(浄水で)・天然温泉(塩素が入っているところは避ける)・低温サウナで汗をかくようにしてください。

 

(2)◎有害物質の排出・解毒のためにビタミン・ミネラルをバランスよくとる

 @栄養のバランスのとれた食事をとりましょう。

・特に緑黄色野菜を意識してとるようにしてください。

 

A必要な場合は、ビタミン・ミネラルを食品添加物が含まれていないサプリメントで補いましょう。

・化学物質過敏症を発症した方は有害物質の排出・解毒のためにビタミン・ミネラルを使い果たし、不足していることが多いと言われています。

※詳しくは専門医に相談してください。


4)規則正しくストレスの少ない生活により身体機能を改善する

 

 これまで主に化学物質による身体への負荷(ストレス)を減らす必要性を書いてきましたが、化学物質だけでなく、カビやダニなどの生物的ストレス、電磁波などの物理的ストレスや、精神的ストレスも症状を悪化させることがあります。

 

(1)規則正しい生活をするよう心がける

 生活リズムが乱れると自律神経(付録参照)の機能に影響を及ぼします。夜更かし等をしないようにしましょう。

 睡眠のサイクルを調節し免疫力を高めるホルモンのメラトニンは、暗い場所で脳から分泌されますので、夜は部屋を暗くして寝ましょう。

 

(2)生物的ストレスの除去

 化学物質を使わずに掃除し、また湿気にも注意してカビ、ダニなどを防いでください。

 

(3)電磁波をできるだけ避ける

 電磁波(付録参照)の発生源のすぐ近くに長時間滞在せず、使用時間は短くするようにしましょう。

 

@家庭内では、電磁波が強いと言われている電子レンジ、携帯電話、テレビ、パソコン等の使用に注意しましょう。

 

A蛍光灯は、白熱灯に替えましょう。

・特に頭の近くで使う電気スタンドなど。

 

(4)精神的ストレスを軽減する

 適度な趣味、遊びや嗜好品などにより、上手に気分転換をしましょう。


2.医療機関での治療

 

 (1)化学物質過敏症の治療

 基本的な治療法は、これまで述べた対処法・生活の仕方になります。酸素吸入療法や、点滴療法など、医療機関で行う治療もありますが、有効性などは発症者によって異なるようです。医療機関での治療を受ける必要があるかどうかは、専門医にご相談ください。

 

(2)他の病気・歯科疾患の予防を

 化学物質過敏症を発症すると、病医院や歯科医院に行くことだけでなく、薬剤を使用することなどの治療が困難になる場合があります。日頃から生活習慣病などの病気や歯科疾患(虫歯や歯周病)を予防するよう心がけましょう。

 さらに近くの病院・医院に、化学物質過敏症について説明し、ご理解いただいた上で、年1回程度の健康診断を受けることができれば、なお良いでしょう。

 

3.さらなる情報

 

 さらに詳しいことは、以下の情報源などをご活用ください。

 

(1)書籍

@北里研究所病院臨床環境医学センター客員部長の宮田幹夫先生著「化学物質過敏症−忍び寄る現代病の早期発見と治療」(保健同人社。税別1,000円)

 

A特定非営利活動法人 化学物質過敏症支援センター編「化学物質過敏症 食品・生活用品リスト2004年版」 (一般1,500円、化学物質過敏症支援センター会員など1,000円)

 

(2)相談窓口


 @各地の保健所

 A各地の消費生活センター・消費者センター

 B特定非営利活動法人 化学物質過敏症支援センター(CS支援センター)

 Cシックハウス等について:財団法人 住宅紛争処理支援センター
  
電話03-3556-5147(祝日を除く月〜金曜の10〜17時)

 D環境問題やシックハウス等について:東京弁護士会・第二東京弁護士会「公害・環境110番」
 
 電話03-3581-5379(毎月第2・第4水曜の10〜12時)


□付 録

 

化学物質過敏症(CS=Chemical Sensitivityの略) 私たちの身の回りには多種多様な化学物質が使用されているが、呼吸したり飲食したりすることで、知らず知らずのうちに化学物質を体内に取り込んでいる。こうした化学物質を大量に体に取り込んだり、または、微量だけれども長期間にわたって取り込んだ場合、それが体の適応能力を超えると頭痛、動悸、めまい等の症状が現れるようになる。このようにいったん発症して過敏性を獲得すると、その後は極めて微量な化学物質によっても反応してしまう。このような状態を化学物質過敏症と呼ぶ。

場合によっては発症原因とは異なる複数の化学物質にも反応することがあり、この状態を多種類化学物質過敏症(MCS)と言う。

 

シックハウス症候群 家屋内(自宅内)空気の化学物質汚染やカビ・ダニによる汚染などの原因による、さまざまな健康影響の総称。一般的には化学物質汚染による健康影響を指す場合が多く、新築の家に入居後や住宅のリフォーム後に、目がチカチカする刺激感、せき、頭痛、めまい、不眠などの症状を起こすものである。化学物質過敏症の発症の原因(引き金)のうち、シックハウス症候群が占める割合は大きい。

 

自律神経 自律神経とは、「交感神経」と「副交感神経」の二つを合わせた総称の事。基本的にこれらは互いに相反する働きをしている。たとえば、交感神経が心臓の拍動を増加させるのに対して、副交感神経は心臓の拍動をおさえる、などである。自律神経は全身すべての臓器や器官に網の目のように張りめぐらされており、本人の意思に関係なく微妙にバランスを取り合いながら体のリズムを調整している。しかし、このバランスが崩れると頭痛やめまいといったさまざまな症状が現れ、一般的にこれが「自律神経失調症」と言われている。

化学物質過敏症の人は、神経機能検査により自律神経機能に異常値を示す方が多く、神経系の乱れが、神経症状や自律神経症状をはじめとする多彩な症状を引き起こしているとされている。

 

石けんと合成洗剤 私たちの身の回りにある数多くの洗剤は、石けんと合成洗剤の2種類に大きく分類できる。これらは原料が全く違い、石けんはヤシ油や牛脂など天然油脂から作られるのに対し、合成洗剤は石油化学の産物である。ただし、「天然成分由来」などと表示されている合成洗剤もあるので、そうしたものも使わないよう、注意が必要だ。

そのため、石けんと合成洗剤の動植物への影響は大きく異なっている。石けんは、ヒトをはじめ他の動植物にもやさしく、使用後の排水は24時間以内に分解されるので、河川など水環境を汚染することがない。一方、合成洗剤の中に含まれる合成界面活性剤は浸透性があり、水と油など本来分離して混じりあわないものを溶かして混ぜてしまう性質がある。この性質は工業的にも広く利用され、食品や化粧水、医薬品など多くのものに使用されている。洗剤が直接皮膚に触れる場合にもっとも影響が大きく、多くの動物実験の結果から、合成界面活性剤は動物の細胞膜を溶かしてしみ込み、細胞を壊死させると言われている。

 

電磁波 電気が流れると、そこに電場と磁場が生じる。この二つが組み合わさり波として伝わるのが電磁波である。電気の流れるところ、電波の飛び交うところには必ず電磁波が発生することから、高圧線だけでなく携帯電話、家電製品、OA機器からも大量に放射され、私たちは毎日被曝の危険にさらされている。

最近、化学物質過敏症と並んで「電磁波過敏症」発症者の数が増大しており、電磁波過敏症と化学物質過敏症の両方に罹患するケースが多くなっている。電磁波過敏症は、一般的には何も感じないような微弱な電磁波でも、頭痛・めまい・吐き気・視力障害・疲労感等の多種多様な症状を引き起こす。

 

トリハロメタン トリハロメタンとは、クロロホルム・ジブロムクロロメタン・ブロモホルムなどの総称。水道水は消毒のために塩素処理がされているが、この塩素と水の中に残っていた小さなゴミ、有機物などが結びついてトリハロメタンができるとされている。トリハロメタンの含まれた水道水を飲用したり、揮発したトリハロメタンを人が吸い込むと、それらは人間の脂肪に溶けやすいため腸壁から吸収されて脂肪の多いところに入り込み、体内に蓄積していく。また高い発がん性があるといわれている。

 

有機農産物および有機農産物加工食品 有機農産物は、化学合成農薬・肥料を2年以上(果樹、茶などの多年生作物は、最初の収穫前3年以上)使っていない土で栽培された農産物。有機農産物加工食品は、水と塩を除いた原材料の割合のうち、有機農産物を95%以上使って作られたもの。1999年のJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)改正を受けて、2001年4月から、第三者機関によって認定されて有機JASマークが付けられた食品でなくては「有機」「オーガニック」などの表示をしてはならない制度が導入された。

 

有酸素運動 呼吸により酸素を取り込みながら一定時間以上続けて行う運動のこと。ウォーキング、ジョギング、サイクリング、エアロビクスなどがある。なお水泳でも有酸素運動は可能であるが、プールには塩素やトリハロメタンが多く含まれることがあると言われているため、化学物質過敏症発症者は避けたほうが良い。

 

 

□参考文献

 

本冊子は、以下の文献を参考にさせていただきました。

 

・宮田幹夫さん「化学物質過敏症−忍び寄る現代病の早期発見と治療」(保健同人社)

・石川哲さん・宮田幹夫さん「化学物質過敏症−ここまできた診断・治療・予防法」(かもがわ出版)

・坂下栄さん「古くて新しい洗剤問題 第1回」(CS支援センター会報第3号)

・日本消費者連盟編「合成洗剤のない暮らしガイド」(風媒社ブックレット)

・日本子孫基金「食べるな、危険!」(講談社)

・渡辺雄二さん「食品添加物総点検〜環境ホルモン・遺伝子組み換え食品が食卓に!!〜」(日本消費者連盟)


 

化学物質過敏症ハンドブック

2003年5月1日初版発行

2004年12月15日第2版発行

編者・発行者:

特定非営利活動法人 化学物質過敏症支援センター

〒231-0006 横浜市中区南仲通4-39石橋ビル5階

電話:045-222-0685   ファクス:045-222-0686

相談専用電話:045-663-8545

※本冊子は大豆油インクとケナフ紙を使用しています。


トップページ(フレームあり)へ