会報「CS支援」

 

「シックスクール」が出版されました
  又木京子(CS支援センター理事)=会報22号(2004.12.28)

 

「子どもの健康と学習権が危ない!」

 昨年2月、化学物質過敏症支援センター(CS支援センター)は、上記のテーマを取り上げ、「シックスクールプロジェクト」を立ち上げました。目的は、学校での化学物質過敏症の発症要因を減らすこと、また、発症した子どもたちが学校に通 えるまたは学ぶことを保障する環境をつくること、また、関係情報を提供すること、さらに、国や自治体に政策提言すること、そして、これらのために本を出版しようというものでした。
 現場のヒアリング、学校の調査などを続け、やっと本が出来上がりました。ヒアリング、調査にご協力くださった皆様へ、この場をお借りして、あらためてお礼を申し上げます。
 会員の皆さまはもちろんのこと、是非教育委員会や学校関係者に読んでいただきたいと思います。図書館や学校図書室にも、そろえて欲しい本です。
 CS支援センターが開設している電話相談には、たくさんの患者さんがアクセスしてきます。その中で、子どもたちに関する相談は、病気や生活に関するものだけでなく、学校が病気を理解してくれない、その結果 、子供が学校に行けない、まさに学習権が脅かされているという悲痛なものが多くありました。
 もともとCSの患者さんの多くは、病気の辛さだけでなく、家族も含めた周囲の不理解という悩みをかかえています。子どもの場合は、この周囲の不理解が学校は先生の不理解であり、学習する権利が奪われるだけでなく、不登校・怠け者の烙印まで押されかねません。
 学校での発症要因を取り除くことと教育関係者に病気の理解を広げることは、相談内容から見て、急務でした。
 私たちはまず、患者さんの通う学校で、比較的理解の高い事例をヒアリングさせてもらうことにしました。全国に足を運び、ご家族と教育委員会や学校さらに保健所などを訪問しました。これらの現場のほとんどは、子どもの親が粘り強く学校や教育委員会に交渉されたものであり、さらに、この親の訴えに理解を示し、CSの子どもと向き合う姿勢を持つ教育関係者がいらっしゃった事例です。
 しかし、学校現場では、CSに理解を示し対策を取ろうにも、教育予算や制度に阻まれ、並々ならぬ 苦労を重ねていることを知りました。ここに政策提言の必要性が生まれました。
 種々の理由ですべての調査を掲載することができなかったのは残念ですが、この本を通 して、もっと現場の事例が上がってくることを期待しています。

シックスクールは人権問題

 そして、この本の「はじめに」に書きましたが、「『一人の子どもの教育環境をつくる事は全部の生徒の教育環境を作ることである。学校として当然のことをしている』と淡々と説明された校長先生、シックスクール問題は、教育のバリアフリー化、教育のノーマライゼーションのひとつであり、『人権問題』だと語った教頭先生に出会いました。これは、単に化学物質過敏症対策ではなく、多様な条件を持った子どもの一人一人の条件にできるだけ沿った教育環境を作るという決意です。教育の原点であり未来でもあると感じました」。本書では、これらの現場の声を受けて、政策提言を加える一方、昨年から全国的に行なわれている学校教室の室内空気の化学物質濃度調査結果 を、東京と神奈川で集め、若干の分析も行いました。普通教室より音楽室やパソコン室などの特別 室に基準を超えている例が多いことがわかりましたが、教室の課題は建物だけでなく、子どもたちや教師が持ち込む教材、衣類にも化学物質はあふれているのです。空っぽの教室でも基準値を越える例が予想以上に多いのですから、子どもたちがいる教室内の濃度はおそらく基準値を超えている所が多いと思われます。どうやら教育委員会もどの学校も調査しっぱなしの感がありますが、これらのデータを見たら、教材の一つ一つの購入や使用に安全性を優先する心構えが現場に欲しいと思います。
 専門家として、北里研究所病院の宮田幹夫先生に化学物質過敏症や子どもと化学物質についての基本的な問題・課題も書いていただきました。
 病気の発症を防ぐこと、発症した子どもの学習権を保証すること、この課題に国・自治体そして一人一人の市民ができることから取り組むこと、このために、是非この本を活用してください。

 

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